東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- : スポンサー広告 :
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その12 中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)の概要

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その12 中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)の概要


http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/anzenkakuho/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/12/06/1309711_2_1.pdf

---------------------------------
中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)の概要
(平成23年12月6日 原子力損害賠償紛争審査会)


[基本的考え方]
○本中間指針追補の対象となる者については、
・事故発生当初の十分な情報がない時期は、大量の放射性物質の放出による被ばくへの恐怖・不安を抱くことは、年齢等問わず一定の合理性が認められる。
・事故発生からしばらく経過後は、放射線量等に関する情報がある程度入手できるようになった状況下にあり、少なくとも子供・妊婦の場合は、放射線への感受性が高い可能性があることが一般に認識されていることから、被ばくへの恐怖・不安を抱くことは、一定の合理性が認められる。
・上記恐怖・不安による自主的避難のみならず、自主的避難を行わずに滞在し続けた者にも賠償すべき損害が認められる。
○なお、本中間指針追補の対象以外の損害についても、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められることがあり得る。


[自主的避難等対象区域]
 発電所からの距離、避難指示等対象区域との近接性、政府等から公表された放射線量に関する情報、自主的避難の状況等を総合的に勘案して対象区域(以下の市町村から避難指示等対象区域を除く)を明示。

県北地域
福島市、二本松市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村

県中地域
郡山市、須賀川市、田村市、鏡石町、天栄村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町

相双地域
相馬市、新地町

いわき地域
いわき市

※避難指示等対象区域南相馬市、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村、いわき市の一部、田村市の一部、伊達市の一部及び川俣町の一部


[損害額]
○自主的避難者及び滞在者の損害について、精神的損害と生活費増等を一括して一定額を算定し、同額とすることが公平かつ合理的。
○具体的には、事故発生時に自主的避難等対象区域内に住居があった者の損害額は以下を目安とする。

対象区域内に居住していた子供・妊婦 40万円(事故発生から本年12月末までの損害)
    〃        上記以外の者 8万円(事故発生当初の時期の損害)

※ 避難指示等対象区域内に住居があった者についても、自主的避難者や滞在者に準じて本中間指針追補の賠償の対象とし、対象期間に応じた額を損害額とする。


---------------------------------

スポンサーサイト

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-12-07 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その11 日弁連意見書

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その11 日弁連意見書

2011年11月24日
日本弁護士連合会

東京電力福島第一、第二原子力発電所事故における避難区域外の避難者及び居住者に対する損害賠償に関する指針についての意見書
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2011/111124.html

-------------------------------
意見書の趣旨
1 政府指示区域以外からの避難についても、合理性がある場合には救済対象とすることを指針に明記すべきである。その避難には、十分な情報がない中で東京電力福島第一原子力発電所からの大量の放射性物質の放出による被ばく等の危険を回避するためのもの(第一類型)と低線量の被ばくの危険を回避するためのもの(第二類型)があるとしても、両者は時期的に重なりある部分もあることを認めるべきであり、一期、二期という表現ではなく、類型という表現が適切である。
2 第一類型については、東京電力福島第一、第二原子力発電所事故後、大量の放射性物質放出の危険があったこと、情報が混乱していたこと、アメリカ合衆国政府が2011年(平成23年)3月17日に福島第一原子力発電所から80km圏内について避難勧告をしたこと(この避難勧告は同年10月6日まで継続された。)などを考えると、最低でも、福島第一原子力発電所から80km圏内となる部分がある市町村については、全ての者について、対象とすべきである。
3 第一類型における避難開始の終期としては、政府の認定でも、安定冷却・水素爆発の危険性が消失したとされるステップ1の達成後である、2011年(平成23年)7月末以降とすべきである。
4 第二類型については、低線量の被ばくの危険を回避するためのものである以上、対象地域を指定する際に考慮する要素として、放射線量を挙げるべきであり、第1に、少なくとも3月当たり1.3mSv(年間5.2mSv、毎時約0.6μSv)を超える放射線が検出された地域については、全ての者について対象とすべきであり、第2に、追加線量が年間1mSvを超える放射線量が検出されている地域についても、少なくとも子ども・妊婦とその家族については対象とすべきである。
5 いずれの類型においても、対象地域の指定に当たっては、コミュニティの分断や混乱を避けるために、原則として市町村単位とすべきであり、市町村の中に一部でも上記要素に該当する部分が存在する場合には対象とすべきである。
6 対象とされた市町村以外であっても、福島第一原子力発電所からの距離、放射線量、避難者の属性等から、個別に、避難に合理性が認められる場合には賠償されることを指針に明記すべきである。
7 損害賠償が認められるべき項目としては、避難者に対しては、生活費の増加分を含む、避難費用と精神的損害について認められるべきである。避難者の生活費の増加分については、全てが精神的損害と一括されるのではなく、避難に伴い、家族や地域社会が分断させられたために、一人当たり月1万円以上増加した携帯電話代や交通費等については、「高額の生活費の増加」として、精神的損害とは別に賠償されるべきである。
8 上記の第一類型及び第二類型の対象地域に居住する者についても、生活費の増加分及び精神的損害について賠償がされるべきである。
9 早急な除染実施の必要性は高いが、他方、除染によって、全ての問題が解決するわけではなく、相当長期にわたり、避難の必要が生じ、また、対象地域居住者の精神的・経済的負担が続くことを確認すべきである。


---------------------------------
意見書全文
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/111124.pdf


テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-12-02 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その10 中間指針追補(自主的避難等に係る損害関係)のイメージ(案)

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その10 中間指針追補(自主的避難等に係る損害関係)のイメージ(案)


原子力損害賠償紛争審査会第17回資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/1313502.htm

----------------------------------

(審17)資料1

中間指針追補(自主的避難等に係る損害関係)のイメージ(案)

第1 はじめに
(1)自主的避難等の現状等
○原子力損害賠償紛争審査会(以下「本審査会」という。)は、平成23年8月5日に決定した「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(以下「中間指針」という。)において、政府による避難等の指示等(以下「避難指示等」という。)に係る損害を示したが、その際、避難指示等に基づかずに行った避難(以下「自主的避難」という。)に係る損害については、引き続き検討することとした。
○本審査会において、関係者へのヒアリングを含めて調査・検討を行った結果、避難指示等があった区域(以下「避難指示等対象区域」という。)の周辺地域では自主的避難をした者が相当数存在していることが確認された。自主的避難に至った主な類型としては、①本件事故当初の時期に、自らの置かれている状況について十分な情報がない中で、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の水素爆発が発生したことなどから、大量の放射性物質の放出による放射線被曝への恐怖や不安を抱き、その危険を回避しようと考えて避難を選択した場合、及び②本件事故後しばらく経過した後、生活圏内の空間放射線量や放射線被曝による影響等に関する情報がある程度入手できるようになった状況下で、放射線被曝や未確認の放射性物質の存在への不安や恐怖を抱き、その危険を回避しようと考えて避難を選択した場合が考えられる。
○同時に、当該地域の住民は、そのほとんどが自主的避難をせずにそれまでの住居に滞在し続けていたこと、これら避難をしなかった者が抱き続けたであろう上記の恐怖や不安を無視することはできないこと等も確認された。(以下、当該地域の住民による自主的避難と滞在を併せて「自主的避難等」という。)
(2)基本的考え方
○中間指針の対象となった避難指示等によって避難等を余儀なくされた場合以外の損害として、自主的避難者及び滞在者(以下「自主的避難者等」という。)に係る損害について併せて示すこととする。
○本件事故と自主的避難者等の被害との相当因果関係は、最終的には個々の事案毎に判断すべきものであるが、本中間指針追補では、本件事故に係る紛争解決に資するため、避難指示等を受けこれまで賠償の対象となっているもの以外で賠償が認められるべき一定の範囲を示すとともに、この際に共通に認められるべき損害項目・金額を示すこととする。
※避難指示等を受けて避難等をした者につき、既に精神的損害の賠償対象となっている場合を、本中間指針追補の対象とすべきか否か。
○したがって、本中間指針追補で明示していない損害であっても、個別具体的な事情によっては、賠償すべき損害と認められることがあり得る。

第2 自主的避難者等の損害について
(1)対象区域
自主的避難者等の損害を賠償する対象となる区域(以下「自主的避難等対象区域」という。)は、○○、○○、・・・・、○○の市町村とする。
※対象区域をどうするか。
(考え方)
1)「第1 はじめに」で示したように、本件事故を受けて自主的避難に至った主な類型は2種類考えられるが、いずれの場合もこのような恐怖や不安は、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の状況が安定していない状況下で、同発電所や避難指示等対象区域からの距離、政府や地方公共団体から公表された放射線量に関する情報、居住地域の他の住民の自主的避難の状況等の要素が複合的に関連して生じていると考えられる。以上の要素を総合的に勘案すると、少なくとも自主的避難等対象区域においては、住民が放射線被曝への相当程度の恐怖や不安を抱いたことには相当の理由があり、また、それに基づき自主的避難を行ったことについてもやむを得ない面がある。
2)自主的避難者等の事情は個別に異なり、損害の内容も多様であるが、本中間指針追補では、自主的避難等の対象者全員に公平かつ等しく賠償すること、及び可能な限り広くかつ早期に救済するとの観点から、一定の自主的避難等対象区域を設定した上で、同対象区域に居住していた者に少なくとも共通に生じた損害を示すこととする。
3)上記自主的避難等対象区域以外の地域についても、個別具体的な事情に応じて、賠償の対象となる場合を排除するものではない。
(2)対象者
今回の自主的避難等の損害賠償の対象者は、本件事故発生時点において自主的避難等対象区域内に生活の本拠としての住居があった者(ただし、これらの者が避難指示等による避難等対象者として既に精神的損害の賠償対象とされている場合を除く。)とするか否か。
(考え方)
1)損害賠償請求権は個々人につき発生するものであるから、損害の賠償についても、世帯単位ではなく、個々人に対してなされるべきである。
2)上記対象者以外の者についても、個別具体的な事情に応じて、賠償の対象となる場合を排除するものではない。
(3)損害項目及び損害額
ア)自主的避難者等が受けた損害のうち、以下のものが一定の範囲で賠償すべき損害と認められるのではないか。ただし、個別の事情によっては、この他の損害項目も認められ得ることとしてはどうか。
① 放射線被曝への恐怖や不安により自主的避難を行った場合における以下のもの。
)自主的避難によって生じた生活費の増加費用
)自主的避難により、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛
)避難及び帰宅に要した移動費用
② 放射線被曝への恐怖や不安を抱きながら自主的避難等対象区域内の住居に滞在を続けた場合における以下のもの。
)放射線被曝への恐怖や不安、これに伴う行動の自由の制限等により正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛
)放射線被曝への恐怖や不安、これに伴う行動の自由の制限等により生活費が増加した分があれば、その増加費用
イ)ア)の①の)、)及び)に係る損害額、②の)及び)に係る損害額ともに、これらを合算した額を同額として算定するのが、公平かつ合理的な算定方法と認められるのではないか。
※損害項目とその算定方法をどのように考えるか。
案1 自主的避難者も滞在者も、同様の苦痛等を受けていたと評価し得るのであり、自主的避難者と滞在者で、避難費用の負担の有無等個々の事情は異なるにせよ、両者同額の賠償とする。また、実際に、誰がどの時点で「自主的避難」を行ったのかを認定するのは困難。
案2 自主的避難者も滞在者も、同様の苦痛等を受けていたが、自主的避難者には実際に避難費用が生じているので、前者については例えば往復の交通費(合理的な範囲の実費あるいは定額)を加算した賠償とする。
ウ)イ)の具体的な損害額の算定に当たっては、対象者のうち子供及び妊婦については一人○○円を目安とし、その他の対象者については一人○○円を目安とする。
※損害額はいくらか。
(考え方)
1)本件事故において自主的避難を行った者は、主として自宅以外での生活による生活費の増加並びに避難及び帰宅に要した移動費用が生じ、併せてこうした避難生活によって一定の精神的苦痛を被っていることから、少なくともこれらについては賠償すべき損害と観念することが可能である。また、自主的避難等対象区域内の住居の滞在者は、主として放射線被曝への恐怖や不安、これらに伴う行動の自由の制限等を余儀なくされることによる精神的苦痛を被っており、併せてこうした不安等によって生活費の増加も生じていることが考えられることから、少なくともこれらについては賠償すべき損害と観念することが可能である。
2)賠償すべき損害額については、自主的避難が、避難指示等により避難等を余儀なくされた場合とは異なるため、これに係る損害について避難指示等の場合(ア)①)及び②)の生活費増加分を除き実費が損害額)と同じ扱いとすることは、必ずしも公平かつ合理的ではない。
 一方、自主的避難者と滞在者とでは、現実に被った精神的苦痛の内容及び程度並びに現実に負担した費用の内容及び額に差があることは否定できないものの、いずれも自主的避難等対象区域内の住居に滞在することに伴う放射線被曝への恐怖や不安に起因して発生したものであること、当該滞在に伴う精神的苦痛等は自主的避難によって解消される一方で、新たに避難生活に伴う生活費増加等が生じるという相関関係があること、自主的避難等対象区域の住民の中には諸般の事情により滞在を余儀なくされた者もいるであろうこと、広範囲に居住する多数の居住者につき、自主的避難者と滞在者を区別し、個別に自主的避難の有無及び期間等を認定することは実際上極めて困難であり早期の救済が妨げられること等を考慮し、自主的避難の有無によりできるだけ金額に差を設けないことが公平かつ合理的である。
 こうした事情を考慮して、精神的損害と避難費用等を一括して一定額を算定するとともに、自主的避難者と滞在者の損害額については、基本的に同額とすることが妥当と判断した。
3)対象者の属性との関係については、特に本件事故発生当初において、大量の放射性物質の放出による放射線被曝への恐怖や不安を抱くことについては、年齢・性別を問わず一定の合理性を認めることができる。その後においても、少なくとも子供・妊婦の場合は、放射線への感受性が高い可能性があるとされていることから、比較的低線量とはいえ通常時より相当程度高い放射線量による放射線被曝への不安を抱くことについては、人口移動により推測される自主的避難の実態からも、一定の合理性を認めることが可能である。
このため、子供・妊婦については、少なくとも本件事故発生後○○までの分を、また、その他の対象者については、少なくとも本件事故発生当初の時期の分を、それぞれ賠償の対象期間として算定することが妥当と判断した。
4)ア)~ウ)については、個別具体的な事情に応じて、これ以外の損害項目が賠償の対象となる場合や異なる賠償額が算定される場合を排除するものではない。
※子供や妊婦が自主的避難した際の同伴者の損害をどう考えるか。
案1 損害は個々人に生じるものであり、子供や妊婦を対象として損害を認める以上、同伴者の損害を認める必要はない。仮に認めれば、滞在者との関係で不公平。
案2 子供や妊婦が避難する場合、同伴者が同行するのが通常であり、同伴者の損害を認めてよい。滞在者には同伴者の損害は生じないのだから、差が生じてもやむを得ない。
案3 同伴者の損害は子供や妊婦の損害に伴って生じるものとして一応観念できるが、実際には子供や妊婦の生活費増加分に含まれると評価することができ、金額として加算する必要はない。
※いつまでの損害額として算定するか。
案1 9月末+α
理由:9月末に緊急時避難準備区域が解除されたことから、その時点以降は、その外の区域に滞在することに不安を持つのが合理的とは言い難い。
案2 本中間指針追補策定時点まで
理由:損害賠償は過去の事象について判断するものであり、将来の状況が不明な中、将来分の賠償も認めるべきではない。
案3 12月末まで
理由:ステップ2の年内終了が見込まれており、原子力発電所の状況もある程度安定すると考えられる。また、少なくとも12月末までであれば、本中間指針追補策定時から確実な将来として見通すことができる期間として賠償対象としても不合理ではない。
案4 来年3月10日まで
理由:本件事故後1年という一つの区切りである(避難指示等による避難等の賠償における精神的損害の第2期の終期でもあり、整合性がとれる)。また、そのころ以降には、今後の状況の改善により、現在の不安は一定程度解消していることも考えられる。
(以上)


----------------------------------

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-11-26 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その9 原子力損害賠償紛争審査会第16回資料

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その9 原子力損害賠償紛争審査会第16回資料


原子力損害賠償紛争審査会(第16回)
1.日時
平成23年11月10日(木曜日)16時00分~18時00分
2.場所
文部科学省(中央合同庁舎7号館東館) 3階講堂

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/1313180.htm

----------------------------------
(審16)資料1
自主的避難に関する主な論点(案)

本資料は、審査会における議論のために作成したものであり、指針の内容、損害の範囲について何ら予断を与えるものではない。

 自主的避難に係る原子力損害について、①対象時期、②対象区域、③対象者の属性、④損害項目等をどのように考えるべきか。
 また、自主的避難に一定の合理性を認め、賠償の対象とした場合、同区域の滞在者に対する賠償は認め得るか。認め得るとすればどのような損害なのか。
 さらに、政府指示に伴う避難者との関係はどのように考えるべきか。

1.対象時期
【論点】
1.これまで、自主的避難は、事故当初の類型(避難の理由:十分な情報がない中で大量の放射性物質の放出による被曝等の危険を回避。以下「第一期」という。)と一定時間が経過した以降の類型(避難の理由:低線量の被曝の危険を回避。以下「第二期」という。)では、その性質が異なるため、2つの類型を分けるべき、との議論があった。 一方、自主的避難の理由が異なるとしても、特定の時期で分けることは必ずしも合理的ではないとの見方もあるが、どのように考えるべきか。
2.仮に2つの類型に分けた場合、第一期にも含まれると考えられる低線量の被曝の危険を回避することに関する損害についてどう考えるか。
3.以上の両案につき、当面、指針で示す賠償の対象時期をいつまでとするか。
・ 過去のある時点(例えば9月末)までとするか。
・ 将来のある時点(例えば来年3月末)までとするか。


2.対象区域(別紙地図参照)
【論点】
1.対象区域の基準は何か。以下の要素が考えられるのではないか。あるいは,これらの他に何かあるか。
(1)自主的避難者の数、割合
(2)福島第一原発からの距離
(3)これまでの警戒区域、緊急時避難準備区域、計画的避難区域、特定避難勧奨地点等との近接性
(4)線量
2.区域設定する場合、以下のどの区域で考えるか。
(1)距離のみ(原発からの距離又は避難区域等からの距離)
(2)市町村より小さい単位(集落等)
(3)市町村
(4)福島県内の行政区域(県北、県中等)
(5)その他
※線量のみで区域設定することは困難
3.第一期と第二期と分ける場合、分けない場合で、上記1.2.の考慮内容は変わる
か。
【区域設定の例】
○自主的避難者が、一定の数、割合存在する地域(市町村又は行政区域)。
○福島第一原発から一定の距離の区域(距離、集落等、市町村又は行政区域)。
○これまでの警戒区域等と隣接した区域(距離、集落等、市町村又は行政区域)。
○一定の線量を示した区域(集落等、市町村又は行政区域)
○上記の要素を組み合わせて考慮した区域(集落等、市町村又は行政区域)
○その他


3.対象者の属性
【論点】
1.子供、その親を中心として自主的避難をしている実態が推測される中、線量に対
する不安は、子供、妊婦には大きいと考えられるが、どう取り扱うか。
2.自主的避難者への賠償を認めた場合、滞在者への賠償は認め得るか。
3.滞在者への賠償を認めた場合、賠償を認める地域へ事故後に転入してきた者(①
避難指示区域等からの避難者、②業務等による転入者)の扱いをどうするか。


4.損害項目等
【論点】
賠償の対象となる者を決めた場合、
1.自主的避難者に、どのような損害項目が認められるか。
2.その際、滞在者はどうか。
3.さらに、政府指示による避難者との関係はどうか。
4.これらの議論の基礎として、自主的避難者や滞在者に対するこれらの損害賠償は、
法的にどのような性格のものか。政府指示による避難者の場合と同じか否か。
5.精神的損害を認める場合にその金額の算定方法をどうするか。政府指示に伴う
避難者の慰謝料との関係はどうか。自主的避難者と滞在者の関係はどうか。


----------------------------------

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-11-11 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その8 原子力損害賠償紛争審査会第14回での議論

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その8 原子力損害賠償紛争審査会第14回での議論

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/attach/1312376.htm

原子力損害賠償紛争審査会(第14回)
日時 平成23年9月21日(水曜日)16時00分~18時00分
場所 文部科学省(中央合同庁舎7号館東館)3階講堂
-------------------------------

<略>

【能見会長】  以上、自主的な避難についての論点を整理したものでございます。多くの論点はおそらく前回審査会の議論の中で出てきたものを、多少は発展させたものもありますけれども、前回出てきた議論がほとんどだったと思います。若干つけ加わっている点もあるかもしれませんけれども、特にこの資料自体は一定の方向性を示すものではございません。ということで、今日は全くご自由にご議論いただきたいと思っております。
 前回の審査会においでにならなかった先生方もおられるかもしれませんが、議事録等はごらんいただいていると思いますので、大体の議論の雰囲気はおわかりかと思います。前回、あえて私がまとめると、何か方向性をつけるようで申しわけないので、そういうつもりではないんですけれども、前回いろいろ議論がありまして、この自主的な避難についてなかなか基準というのがそう簡単ではないかもしれないけれども、賠償の対象になるような損害というのはあるのかもしれないと。あるのかもしれないというのは、ちょっとあいまいかもしれない。あるのではないかというようなご意見が多かったと思います。ただ、今のように私が仮にまとめても、それに対して皆さんが持っているニュアンスというのはそれぞれ大分違っておりましたので、私のまとめにかかわらず今日はご自由にご発言いただければと思います。どなたからでも、ご意見がございましたら、お願いいたします。
 1つは、あまりすべてにわたって最初から、どこからでもというと議論しにくいかもしれませんので、まず2つに分けた。これも前回の審査会の中で出てまいりましたが、あるいはちょっと切り口が違ったご発言をされた方もおられますけれども、原子力発電所の事故が起きて直後に十分な情報がないまま避難したというグループと、それから、一定の情報がある程度出てきて、放射線量がある程度わかって、その段階で避難されたグループ、そういうものでちょっと違う問題があるのではないかというご議論がございましたので、今日も一応その2つのグループを分けて論点を整理いたしました。そもそもこの2つの分け方でよろしいかどうか。中島委員は少し違った切り口もご発言されたかと思います。一過性のというのか、最終的には20ミリシーベルトに満たないけれども、途中の段階で瞬間的にそういう計測がされたと。そういうものについてはその段階で避難したグループというのはそれなりに合理性があるのではないかというご発言だったと思いますが、そういうカテゴリーも念頭に置きながら、こういったカテゴリーを分けるということについて、もし何かご意見があればお願いしたいと思います。

【中島委員】  前回は、今、会長がご指摘のような観点で考えてみたんですが、少なくとも緊急時については、データに基づいて避難したというわけではないということも考えますと、時間的な区分として、当初の時期、緊急時については線量を基準とするという意見は撤回したいと思います。むしろ線量よりは時間と場所という切り口からの基準のほうが実態に合っているのではないかと考えます。

【能見会長】  前回、大塚委員も、初期のというのと、少し後からとで分けたらどうかというご意見でしたけれども、今日のまとめの仕方等について、何かご意見ございますか。

【大塚委員】  基本的に私の考えはこれとほとんど似ていますので、大変きれいにまとめていただいたなと思っていました。
 1つだけちょっと追加的に、伺うということでもあるんですけれども、4ページの3のところで、事故から一定期間経過後の自主的避難と書かれていて、その3行目に、この区域が決まって、「自らの生活圏内の放射線量も年間20ミリシーベルト以下と予測されることが確認された」と書いてあって、ここは私自身も重要なところだと思っているんですけれども、これが確認されたのは、上の、3ページ下から始まっているこの一連の流れの中では、私は4月22日だと思っているのですが、そのような理解でいいかどうかちょっと確認させていただきたいと思います。その辺がおそらく、事故当初の自主的避難と事故から一定期間経過した後の自主的避難を区別する境目になるのではないかと個人的には考えていますので、そこを確認させていただきたいということでございます。

【能見会長】  これは資料をつくった事務局のほうで説明してください。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  ここの確認されたのがいつかということについては、先ほど説明で、4月22日ということも念頭には置いていますので、そういうふうに説明をさせていただきましたけれども、その前の4月11日のところも官房長官の記者会見があったりして、どの時点かというのは、必ずしも事務局としては判断をしたものではございません。

【能見会長】  ということで、この資料をもとにしながらこの委員会で決めていただければと思いますが、一定の関係があるということですね、大塚委員のご発言は。

【大塚委員】  はい。

【能見会長】  いずれにせよ、こういう区分けの仕方、時間的などこまでかというのは若干問題が残っているかもしれませんけれども、こういうふうに分けた上で事故直後の場合というのを先に議論するということでよろしいでしょうか。それでは、そちらについて、もうちょっと踏み込んだご議論があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 今のように分けますと、いつまでというのが1つの問題ですし、それから対象区域というものがどういうふうに決められるべきかということと、あと、大きいものはやっぱり損害の項目ですね。どんな損害を賠償していいのかというようなことですが、この対象者、おそらく皆さんも比較的近い意見をお持ちかもしれませんけれども、この第2カテゴリーの長期の、少したってからの避難の場合と比べると、初期に情報量がないもとで避難したという場合については、対象者の属性はあまり大きな考慮の要素ではないんじゃないかという感じもいたしますけれども、いかがでしょうか。

【高橋委員】  前回は休みまして申しわけございませんでした。基本的な区別についても異論はございません。
 ただ、行政上の指針として考える場合には、やはり定型的な基準を明確にした上で、あと個別の事情がいろいろおありの方については個別にご主張いただくという形が望ましいのではないかと思います。そういう意味では、行政上の区域を1つ考えるというのは合理的なんじゃないかと思います。
 対象者についても、今、会長がおっしゃいましたように、この場合には属性を気にする必要はないのかなと思います。ただ、その場合の比率とか、そういうところまで見るのかどうか。やっぱりそこは政府指示の過程を見て、その区域ごとに、その対象にするのを拾うのが合理的かどうかというところの過程を少し見ながら考えるのがよろしいのかなと思っておりまして、そこら辺のところは副次的な要素として見るほうがいいのではないかと思っております。
 以上です。

【能見会長】  ちょっと先ほど私、重要な点を申し上げるのを忘れましたけれども、こういうふうにカテゴリーを分けても、このカテゴリーでもって賠償すべきかどうかという大前提の問題があって、そこも含めて、皆さんのご議論をお願いしたいと思います。もし賠償するとなったら、どういう区域で、いつまでで、どういう損害かという問題ですね。今までのご議論ですと、当初、情報量が少ない段階で自主的に避難されたグループというのは、それなりに賠償の合理性があるという理解でよろしいでしょうか。そうすると、どういう範囲で、どういう損害で、あるいはどういう時期の、そういうのが争点になるということでよろしければ、少しそういう点に踏み込んで、今、高橋委員からは、対象区域については行政区域ごとで検討するのがいいのではないかというご意見だったと思いますが、ほかの点についていかがですか。

【中島委員】  私はむしろ、距離のほうを基準にし、行政区域は副次的な要素として考えるべきではないかと考えます。主は距離を、行政区域は従とすべきではないかと考えます。その1つの理由としては、そもそも政府の指示も距離を基準になされていたわけですし、ここの資料では、3月16日のアメリカ政府の退避勧告が80キロと、これも距離を基準にしておりました。行政区域は人的なつながりという副次的な要素としては考慮すべきかもしれませんけれども、主はやはり距離と考えるべきではないかと。特に当初の時期については、事情がよくわからない恐怖感もあったと思いますし、それを考えますと水素爆発もあったりして、それが行政単位を基準にするというのはちょっと違和感を感じるんですけれども。放射能が届く距離というのは、やはり感覚的には行政区画よりは距離なのではないかと思うんですけど。
 ちなみに、アメリカ政府は80キロとしたようですけれども、調べましたら、カナダ政府は日本政府に従っていたようですけれど。
 しかし、いずれにしろ、距離のほうを主とするほうが、当初の緊急事態の時期には、第2ステップのときはちょっとまた違うかもしれませんが、当初の時期は距離ではないかと考えます。

【能見会長】  行政区域であれ、あるいは距離であれ、何か高橋委員、あるいは中島委員、こんなのはどうかという。これは後でまた詰めればいいことかもしれませんけど。

【米倉委員】  私もやはり最初の段階では距離が一番重要なファクターかなと思っています。それは、1つは、もちろん政府の指示が20キロ圏、そして20キロ圏から30キロ圏の間の屋内退避という段階があったということもありますし、それから、この時点でどれだけ住民の方々に、放射線量あるいは放射能がどういったところを汚染しているかという情報等もそれほど与えられていたとは思わない。もちろん、いろいろなファクターはあるにしても、それが第一かなと思います。
 そして、その上で、では隣の村はどうなのとか、同じ行政区域でありながら、距離が若干異なることによる差等をどのように勘案して副次的に考えるのかなと、そういう2段階なのかなということを感じます。

【能見会長】  どうもありがとうございます。ほかにご意見ございますか。

【高橋委員】  すみません。私が申し上げたのは、当然、行政区域を選ぶときには距離感というのがあると思うんですね。ただ、円を描いて線を引くのかということを問題にしただけで、その引き方はやはりある種、社会的な共同体のところの線の引き方があるんじゃないかと申し上げたので、スパッと距離で引くのかどうかということをちょっと申し上げたということだと思います。

【能見会長】  この距離、あるいは行政区域等でどういうふうに範囲を確定するかということ自体、もちろん大きな問題ですけれども、もし今ここで、すぐに適切な提案がなければ、今の第1グループについての関連するその他の問題についてもご議論いただきたいと思いますけれども、距離あるいは行政区域範囲について、何かほかにご意見はございますか。
 ちょっとこれは、どういうふうに決めたらいいかいろいろ検討しなくちゃいけないと。これは、また少し持ち帰って検討したいと思います。

【大塚委員】  ちょっと質問でいいですか。

【能見会長】  はい、どうぞ。

【大塚委員】  ヨウ素を50キロ範囲で配っているんですけれども、これはどういう理由で50キロにしたかというのを教えていただけますか。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  すみません。はっきり記憶しているわけではないんですけれども、県のほうから、これは県の防災計画に基づいて、どこかで判断をして市町村に配布をしたということで、必ずしも住民に配ったわけではございません。

【大塚委員】  はい。ありがとうございます。

【能見会長】  いいですか。
 それでは、この範囲については、もう少し材料といいますか、検討材料があるかどうかわかりませんけれども、さらに引き続き検討するとして、その他の点についていかがでしょうか。こちらもなかなか難しい問題がたくさんございますが。
 時期もどこまでにしたらいいかというのはもちろん悩ましい点ですけれども、どこかに初期の問題というのは、時間的な限度があるだろうということで、それをどう決めるかという問題が残るわけですが、私の理解では、その期間に逃げて、その後ずっと逃げているというか、避難していて、その期間全部が初期の問題というわけではなくて、おそらく初期の問題というのは、一定のどこか期間を区切ると、そこまでの期間の避難中の損害だったら損害、これが初期の損害というふうに理解するんだろうと私は思っていましたけれども、あるいはちょっと違う理解をされた方はおられますか。
 それ以後続くのは、むしろ第2段階の問題なのかなと思います。
田中委員、どうぞ。

【田中委員】  先ほど質問にもありましたけれども、我が国の防災規定、当初の防災法では、強制避難というのは50ミリシーベルトですね。ですから、当初はそれで対応してきたんですけれども、途中から計画的避難区域とか、そういうところに20ミリという基準がが出てきました。
 それから、今、確認をしたいのですけれども、20ミリシーベルト以上は避難で、20ミリシーベルト以下未満であれば1年間、来年の予測線量が20ミリシーベルト以下であれば、一応現存被曝状況で住んでいていいということになっていますので、その20ミリシーベルトがいつ公知の事実になったかというのが非常に大事なような気がするんですね。
 だから、先ほどもご質問ありましたけれども、それが4月22日なのか、11日なのかというところ、どっちでもいいのかもしれませんけれども、そのあたりが、今、会長がおっしゃいましたような1つの区切りになるんじゃないかなと私は思います。

【能見会長】  はい。野村委員、どうぞ。

【野村委員】  今の区切りの問題なのですけれども、最初の混乱時期は、おそらくどの程度汚染されているかというのがわからないということとあわせて、事故がこの先どういうふうに展開していくのかというのがわからないということもかなり大きな要素ではないかと思うのです。そうしますと、例えば20ミリシーベルトなら安全だとか、それに従った避難指示が出たりした段階で、既に事故の先行きがこれ以上悪化しないということが明確になっていないとすると、自主避難している人が、そういう指示の外側の住民だからといって、自主避難することが合理的でないという判断はしにくいのかなと思っています。

【能見会長】  なかなか難しい、悩ましい問題ですね。
 はい、中島委員。

【中島委員】  今の野村委員と同感なんですが、そうしますと、事実として、当時原子力がもうコントロール可能になったというふうに、一応まだ少なくとも水素爆発のような事態は回避できるようになったと一般に、あるいは政府が認めた時期がいつであったのかを少し調べてみる必要があるように思うんですが、今の手持ちの資料では、4月22日に解除されたところを見ますと、おそらくこの時点である程度めどがついたということが多分根拠になっていると思いますと、大塚委員がおっしゃるように、4月22日あたりかなという気がするんですが、ただ当時、実際どうだったのか、ちょっともう少し確かな資料があったほうがいいように思うんですけれども。

【能見会長】  これは、今、直ちに何か答えることができますか。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  即答は難しいので調べさせていただいて、そのタイミング、それからそれが周知されたタイミングがわかるような資料を、次回には間違いなく用意いたしますし、でき次第、皆様にお送りできるようにしたいと思います。

【能見会長】  はい。

【田中委員】  ちょっとよろしいですか。

【能見会長】  はい、どうぞ。

【田中委員】  私はそこをあいまいにしてしまったら、国の防災の指針が全くないと同じになるんだと思います。だから、当初50ミリだったんだけれども、20ミリに下げたのはそれはそれでいいんですけれども、20ミリよりもさらに大きな範囲で、20キロ以上の範囲で20ミリ以上の被曝が予測されるとすると、国としてはそこまで避難させなければならないことになりますす。それは、避難を強制していないということで、20から30は屋内避難、緊急非難準備区域ということでやっているということは、やはり明確なエビデンスとして、国のほうがこれ以上は大丈夫だということは言っていないと思いますけれども、事実としてはそういうふうに理解しないと、何かよくわからない、基準がどこになるのか、全然わからないことになってしまうような気がするので、私はそこを動かすとなると、ちょっと収拾つかないなという感じがしているんですけれども。

【能見会長】  これは、後のほうのグループの問題ともちょっと微妙に関係していると思うんですけれども、初期の情報が少ない段階で避難したグループについて賠償を認めるかどうかという問題のところは、先ほどから議論しておりますように、当初の段階ではとにかく放射線量がどんなかということもわからない、とにかく爆発があって危険なので、とにかく逃げるというわけですね。ですから、そこでは放射線量の問題は関係ない。
 問題は、それがある程度明らかになってきたときに、田中委員のご意見は、20ミリシーベルトという基準が周知されて、その段階で初期に情報のない中で避難してきた人たちも、初期の避難の正当化はその時点で終わると。簡単に言うとそういうことですね。ですから、その20ミリシーベルトという基準が設定された時点がいつかということですね。

【田中委員】  はい。

【能見会長】  もうちょっと、さっきのほかの野村委員なんかのご意見だと、そういうふうに設定されたかどうかではなくて、やはり爆発等の危険がほんとうになくなったと言えるのかという段階まで、おそらくそちらのほうが少し期間が長くなる可能性があるんだと思いますが。

【野村委員】  いや、ただ、22日に屋内退避の指示を解除した時点において、20ミリシーベルトの基準とあわせて、将来さらに爆発が起こる危険がほとんどなくなったという判断がなされたということがはっきりすれば、それはそれでいいのではないかという趣旨で申し上げました。

【能見会長】  わかりました。
 そうしますと、22日だと、田中委員だと、具体的には何日になるということですか。

【田中委員】  11日か22日かどちらか。

【能見会長】  どちらかですね。はい。あとは考え方の問題ということですね。

【田中委員】  はい。

【能見会長】  ほかにご意見ございますでしょうか。
 少し微妙に考え方は違うかもしれませんけれども、大体11日か22日かというところなんだと思いますが、ただ理屈づけ、どういうふうに理屈をつけるかということが、先ほどちょっと言いましたように、後の問題にも少し関係してくるかと思いますので、今ご意見があれば伺いますけれども、もう少し論点を整理したいと思いますが、ほかにご意見があれば。あるいはほかの損害項目とか、ほかの部分まで含めてご議論いただければと思いますがいかがでしょうか。
 先ほどちょっと言いましたけれども、実際には初期に避難されて、22日までに戻るという方も当然おられたとは思いますけれども、そのままずっと引き続き避難されているという方も結構おられるのではないかと思いますが、こういうグループについてはどういうふうに考えたらいいかということも、これは第2のカテゴリーの自主的避難とも関係するわけですけれども、何かご意見があればお聞かせいただければと思います。
 どうぞ、大塚委員。

【大塚委員】  この点については、先ほど会長がおっしゃったように、基本的に第2の問題のほうに、事故から一定期間経過後の自主的避難についてどう考えるかという問題のほうに移っていくものと思います。
 細かいことを言えば、4月22日に直ちにそちらに移るのか、二、三日の日数を追加するのかというようなことは多少考えたほうがいいかもしれません、新しく別のところに移ってからもとに戻る間に、相当期間必要かというようなことは多少考えたほうがいいかもしれませんが、基本的には4月22日で、11日というご意見ももちろんあると思いますけれども、事故から一定期間経過後のほうの問題に移るのではないかと思います。

【能見会長】  損害の項目はいかがですか。
 簡単に言えば、これは政府の避難等の指示によって避難した者と全く同じようにするということなのか、少し違うように考えるかということですね。
はい、高橋委員、どうぞ。

【高橋委員】  合理性を認めている以上は、あまり区別する必要もないのかなと思うのですけれども、ただ問題は、精神的損害の取り扱いなのではないかなと思います。政府の指示で避難された方の精神的な損害の話と、自主的な判断でされた場合とではどういう精神的な損害を考えるのかというのは、難しい問題なのかなと思います。それ以外のものについては合理的と考えれば、それは一種、救済の対象になるのかなと私自身は思っていますが、その辺ちょっとほかの先生の意見もお聞きしたいと思っています。

【能見会長】  ほかの皆さん、いかがでしょうか。
 これは、今まで政府の避難等の指示によって避難した人たちに対する精神的損害というのがそもそも何であったかということ自体とも関係するんだと思いますけれども、これもぎりぎり全部詰めているわけではなくて、おそらく皆さんの間でも少し理解が違うんだと思いますが、私の理解は、これは避難を余儀なくされて、避難している間の生活の不便さ、あるいはコミュニティから切り離されたことによる不便さといいますか、そういうものが中心であったと思いますけれども、若干ほかの要素も含んでいるかもしれませんけれども、それが中心であったろうと考えております。
 だからこそ、一定期間たつと、不便さというものは多少緩和されるので減額もされるという考え方だったと思っております。そういう不便さということだとすると、私もまだ十分詰めておりませんけれども、初期の段階で自主的避難したということがそれなりに合理性があるんだということであれば、精神的損害も同じような賠償の対象になるのかなというふうに思いますけれども、これは皆さんのご意見を伺えればと思います。
 はい、大塚委員、どうぞ。

【大塚委員】  会長がおっしゃるとおり、不便さという点ではおそらく違わないと思うんですけれども、先ほど高橋委員が言われたこととの関係でちょっと申し上げますと、不便さのもとになっているところの、なぜそういう状況が発生したかというところが若干の違いはあるかもしれなくて、それが強制されているかどうかというところが違うと見るかどうかという問題だと思いますけれども、しかし、いずれにしてもそういう状況があって、意に反して追い出されたと考えれば同じだと思いますが、政府から強制されたという点をどのぐらい重く見るかによって、ちょっと判断が分かれるのかなと思っています。

【能見会長】  ほかにご意見ございますか。
はい、中島委員、どうぞ。

【中島委員】  大塚委員がおっしゃるのももっともかと思いますが、避難指示よりも外側の人で逃げた行為も合理的であったと認める以上は、そのときの強制、恐怖心による避難というのは、政府指示と同質ではないけれども、近い一種の恐怖心による強制のようなものがあったと考えてもよいのではないかなと思います。

【能見会長】  この点は、ちょっと今意見が少し微妙に違う、そんなに大きく違うわけではないかもしれませんけれども、少し違うので、あるいは大塚委員のような考え方に基づくと、同じではないかもしれないけれども、具体的に言うと少し減額してというようなことなんですか。

【大塚委員】  私も考え方のことを申し上げただけで、結論は自分自身も出ていないものですから、考え方を申し上げただけです。すみません。

【能見会長】  ほかにこの第1グループについて、この際詰めておかなくてはいけないという問題点がございますでしょうか。
 それでは、これは今日のご意見を踏まえまして、もう一度練り直しといいますか、整理してまいりたいと思いますけれども、後でまたお気づきの点があれば戻っていただいても結構でございます。
 次の、事故から一定の期間経過後の自主的な避難についてで、こちらのほうがある意味で難しい、大きな問題を含んでいると思いますけれども、こちらについてはいかがでしょうか。

【田中委員】  ちょっとよろしいですか。

【能見会長】  はい、田中委員。

【田中委員】  私自身もちょっと悩ましいなと思っているのは、6月30日に特定避難勧奨地点というのが出て、部落の中で隣同士で違った措置が出てきた。そのときに、小さい子供がいる人たちが自主避難をしたというケースもあるんですね。そういうのをどう扱うかというところが、そこが20ミリになるのか、ならないのかというのは、おそらくそれほど確信を持って国が出せたかというくらいの微妙なレベルのところで避難勧奨したり、しなかったりということが起こっていますので、そのあたりは個別扱いになるのかどうか。
それ以外は、先ほどの議論で、私は22日か、4月の一定の後のほうは、もう20ミリ、そういう場所以外は対象外でいいんじゃないかと、個人的にはそんなふうに思っているんですけれども

【能見会長】  はい。ほかのご意見、いかがでしょうか。
 これは、田中委員にお聞きしたい点があるんですけれども、政府のほうでもって行政的な措置として避難すべきかどうかという基準は、これは20ミリシーベルトなんだと思いますけれども、避難するというのは、ちょっと私も十分まだ理解していませんけれども、緊急に避難しろということなんだと思うんですね。
 それと、そこに長期間いると放射線をたくさん浴びる、最終的には合計では何年かでも浴びるようになって、それは危険であるという問題と、今緊急に避難するというのは、やはり違うカテゴリーのように思うんですが、今、自主的な避難でもってもし問題となっているのが、そこに長いこと住んでいると、今すぐということじゃないかもしれない。長いこと住んでいると危険かもしれないということで避難しているとすると、これは、20ミリというのは基準にはならないんじゃないかと。20ミリというのは、あくまで緊急に避難すべきだという基準ではないんですか。


【田中委員】  非常に難しい問題で、実は国の基準は来年の3月、要するに事故発生から1年間ですね。その積算線量が20ミリになるか、ならないかで判断しているんですね。だけど、普通は、そういうふうに長期には事故が続く、被曝状況が続くというふうにはほんとうはあまり考えていなかったというところに、非常に混乱があることも事実のような気はしますけれども、今、会長がおっしゃったことからいきますと、どれだけになるかわからないという時期を過ぎた後は、もう予測がわかっているんだから、あとは来年の3月までに除染をするなり何なりして、線量を下げてしまえば、避難する必要はなくなるという判断も出てくるんですね。

【能見会長】  それは、どのぐらい除染できるかという予測のもとに考えるということですか。どのくらい除染できるかというのは、まだやってみないとわからないと私なんかは思うんですが。

【田中委員】  そのぎりぎりのところが十分20ミリを下げるぐらいのことはできると思いますけれども、努力すれば。

【能見会長】  いや、私が申し上げているのは、20ミリというのは、緊急に避難するための基準だから、そこに例えば10年住んでいるときに、積算で危険かどうかという問題とは直接は関係ないのではないかと。
そうすると、長期にといいますか、例えば1年ぐらいで除染が半分ぐらいになって、その後ずっと住んでいても大丈夫ですよという基準になれば、除染ということを考慮して、避難する必要はないんだということは十分言えるかもしれないけれども、除染はこれからやってみないとわからないと。今、避難しているのが合理的かどうかという判断の基準には、直ちにならないのではないかというような。

【田中委員】  今、会長がおっしゃったように、10年単位で住んでいて、高いところに住んでいて、幾らならいいという基準は、今は多分なくて、ICRPのリコメンデーションとしては、できるだけ年間1ミリシーベルトに近づくように努力しなさいということだけしか、今は基準はないんだと思います。だから、避難のこととは少し違ってきますね。

【能見会長】  ちょっとまだ少し食い違いはあるかもしれませんけれども、これもちょっと仮定、前回私が申し上げて答えがなかったような気がしますけれども、これはあくまで仮にの話として、年間10ミリシーベルトであると。除染によって減っていくので、ずっとそれが続くわけではないかもしれないけれども、仮に10ミリシーベルトが続くと考えて、その10年間積算されると100ミリシーベルトになると。これもちょっと、そういうふうに単純に積算していいのかどうかわかりませんけれども、総量で100ミリシーベルトになったときに、その基準は100ミリシーベルトというのはそんな安全であるというふうには考えられていないと思いますけれども、そういうことを先まで考えて、現在、特に子供なんかだと思いますけれども、避難したいと考えるのが不合理なのかどうかという問題なんだと思いますけれども。

【田中委員】  その100ミリの基準は、私はちょっと今答えられないですね。どちらかというと医学的な観点が入ってくると思いますので、100ミリというのが、国としてそういうふうに積算線量を決めてしまったのかどうかということも、まだ明確ではないし、それを決めてしまったらば、今、会長がおっしゃったようなことがいっぱい出てきますね。それは非常に広域になります。
【能見会長】  はい。高橋委員、どうぞ。

【高橋委員】  今の会長のお言葉ですが、これを避難の概念に入れるかどうかということだと思うんです。今考えているのは、当面の福島の事故で、放射能の被曝を避けるために一たん出られて、中長期的には戻られることも前提にした方の話をしていると私は受けとめていて、そういう意味では、居住された方が、居所を転居されてしまって、もうもとへ戻られないというところはちょっと将来的な推移も考えないと、なかなか現段階で想像できないんじゃないかという気がします。そこは会長、いかがお考えでしょうか。

【能見会長】  これは、仮に今のような、私の考え方で避難していることが合理的だと判断して、何を賠償するかはまた別の問題ですけれども、私は個人的には、おそらく生活費みたいなものが一定期間ということだと思いますけれども、何を賠償するかは別として、今のような判断で、当初避難して、その人がほんとうにもう戻らないということになるのかどうかというのはケース・バイ・ケースでもあるし、またちょっと違った問題になってくるんだろうと思います。
 今、ここで自主的な避難ということで、何かの賠償をするかどうかというのは、放射線量が20ミリシーベルトを切っているけれども、それなりに不安を感じて避難する人の避難が合理的かどうかという点にかかっているだけで、その後どうなるかはまたちょっと別の問題で、その中のいろいろな人たちの中には、当然戻りたいと思っているけれども、やはりこういう状態では戻れないと考えている人たちもいるわけでというぐらいのことしか、私としてはまだ考えておりませんけれども。

【高橋委員】  後から出てきますが、当面2年の除染の方針が出ております。それはやはり前提にして議論したほうがよろしいのかなと私は思います。
だから、2年後にこうなっているということを前提にして、それで避難されている、戻らない、2年後戻らないという方が合理的かどうかというところを議論すればいいかなと思うんですけれども。

【能見会長】  すると、2年間はどうなんですか。

【高橋委員】  とりあえず2年という話になるんじゃないでしょうか。

【能見会長】  いや、2年間分の避難は、それなりに合理性があると。

【高橋委員】  いや、そこをどう考えるかということだと思います。政府としては当然除染するのですから、それを踏まえて、当分は戻ってこないのが合理的か否かを検討しようということです。

【能見会長】  ちょっと私があまり申し上げたかもしれない。ほかの委員、いかがでしょうか。
 はい、中島委員、どうぞ。

【中島委員】  今の会長のお考えをちょっとそしゃくして、議論がかみ合っていないようなところもありますので整理したいんですが、今までの議論の大まかなところは、まず大きなところでは時期で分けると。
その時期、第1、最初の緊急時の時期というのが、仮にある程度コントロールできるというめどがついたときを境にするということ前提にしますと、最初の緊急時の時期における避難の合理性を基礎づけるものは恐怖心だと思うんですが、ある程度めどがついた次の段階では、避難の合理性を基礎づけるのは放射線量だというふうに考えられると。そうしますと、どの程度の放射線量を根拠に避難を継続していることが合理的と見るかが問題になると。
 このように第2段階のところでは、放射線量が基準になるというふうに考えると、20ミリ以内だからいいか、もう帰れという強制をしていいか、あるいは低放射線の影響を考慮して帰ることを躊躇していることを合理的だと見ていいか、そういう問題ではないかと。
 だとすると、第2段階では、対象者の属性も問題になってくるのかなと思います。

【能見会長】  今の、そこまでは先ほど申し上げませんでしたけれども、基本的にそういう考え方をしております。
 大塚委員、どうぞ。

【大塚委員】  中島委員のご見解に私も基本的に賛成でして、放射線量を見て合理的かどうかを見ていったほうがいいと思っていますけれども、先ほど田中委員の話にあったところがさらに重要だと思いますが、食品安全委員会で今も検討中の生涯100ミリシーベルトというのをもし政府として何か出すのであれば、おそらくそれが結構大きな意味を持ってくるかと思います。
 そういう新たな基準のようなものができた場合には、政府として、やはりそこから出ていくという方に対して合理的な行動ではないとは言えなくなると思いますので、その点はよく検討したほうがいいと思います。
 高橋委員が言われるように、除染は2年でというのは方針としては出ているというのも重要だと思いますが、そこは、なかなか悩ましいところではあるんですけれども、2年で完全に全部終わるのかということは一応考えておいたほうがいいと私自身は思っておりまして、生涯100ミリシーベルトを超えるようなところに住んでいるということがある程度確かであれば、一定額を払うというのはあり得る選択ではないかと思っています。
 そのときに、放射線量を基準に考えるんだと思うんですけれども、ただ、例えば生涯100ミリシーベルトでもがんによる死亡が0.55%増えるということですので、それ自体を賠償の理由にするわけにはなかなかいかないと思いますので、そこはやはり、放射線量を基準にするという中島委員の意見に賛成ですが、最後はやはり不安というところに根拠を持ってくるのだろうと私自身は考えております。

【能見会長】  先に、高橋委員、どうぞ。その後に米倉委員。

【高橋委員】  大塚委員から言及がありましたが、実際、除染が2年で終わるということを申し上げたつもりはなくて、2年後の除染の状況を考えて、それで戻られない方の行動が合理的かどうかを考えましょうと、こういうお話をしたわけです。

【大塚委員】  すると、今は、指針はできないけれども、2年後にもう一度考えるというご趣旨なんでしょうか。

【高橋委員】  いやいや、当面2年を考えましょうと。2年後にまた考えればいい話だと思います。要するに、2年後に例えば60%減ると言っているわけですね、今の方針だと。その60%のところまで減ったということを想定されて動かれるかどうかということを、それが合理的と評価できるかどうかを考えましょうというお話を申し上げたということです。

【大塚委員】  何か、将来の損害賠償の話をしているような感じがちょっとしてきましたけれども。

【能見会長】  それはまたちょっと後で議論しましょう。
 では、米倉委員、どうぞ。

【米倉委員】  ちょっと、先ほどからの議論に少し違和感を感じているんです。最初の、早期において皆さんがある意味で恐怖感を感じて避難をしたというのは、これはそれなりに合理的であるということで、これは、私はいいかなと思うんですが、この4月22日以降は事故が終息し、そして、どういったところでは線量が高いと情報が与えられた、それに基づいて政府がある一定の方針を決めたわけですね。この、決めたときの年間20ミリシーベルトというのが非常に大きな誤解を招いてしまって、そんなところに5年も10年も住んでいられないよねというところが出発点だと思います。
 ただ、本来これが永久に続くことを想定してこの20ミリシーベルトを決めたはずではないはずで、本来は、ICRPの勧告でいえば、これを最終的に年間1ミリシーベルトまで下げていくという努力をする、その中で一つの基準を決めて、それを超える人たちは避難をさせようという、そういう基準として求められているもので、これは随時変わっていくべき性質のものです。
 そうすると、そこに住んでいる人たちがどのように感じたか、そこにきちっとした説明があったのかどうかというのも非常に大事なところで、こんなところに5年10年住めといわれても住んでいられないよねという感覚を持たれることは、ある意味で合理的かもしれないというふうに感じているんです。
 ただ、そこで問題になるのは、そういう人たちが自分の意思でもって自主的に避難した場合と、それから隣の人たちがそこに残ったという、そこにある種の個人の選択が入ってくる。これは、合理的な判断かどうかというのは、非常に私は難しいんではないかというのが率直な感想です。

【能見会長】  合理的な判断のところでそれが影響するかどうかは、私はちょっと違う考えを持っていますけれども、少なくとも残った人たちとの関係といいますか、バランスといいますか、そういう問題が出てくるということはこの論点メモにも書いてありますとおり、また重要な、難しい問題だというふうには思っております。それをどう考えるかも含めて、もしさらにご意見があれば。
 どうぞ、大塚委員。

【大塚委員】  私も多分、会長と同じ意見じゃないかと思ってはいるんですけれども、避難しなかった方についても、合理的な不安を感じていらっしゃる方については基本的に同じように考えていいと思ってはいるんですが、ここに書いてある「一方」というところとの関係で申し上げますと、中間指針で実際に避難した方についてこういうことを考えていたということとの関連で申し上げますと、これは放射性物質との関係での不安とかいうのは考慮していなかったことになると思いますので、それとは別物ではないかという整理はできると思います。
 結局、この避難しなかった人と一定期間経過後に自主的に避難した人との間のバランスというのはどこかで考えなくてはいけないことで、片方だけを賠償して片方はしないというのは、実際なかなか難しくなるものと思っています。

【能見会長】  どこまで大塚委員と同じなのか、よくわかりませんけれども……。

【大塚委員】  すみません。

【能見会長】  いやいや、似たところはもちろんあるんですけれども。ただ、自主的に避難をされた人の賠償と、おそらく、仮に残った人たちについても何らかの賠償があるというときは、どうも賠償の中身は違ってくるんじゃないかという気が、不安だという点で同じだというとらえ方はもちろんあり得ると思うんですけれども、残っておられる方は不安そのもの、不安が続くということの、一定の放射線をあびつつ生活するということの不安が続くということも、仮に賠償だったら賠償だと思いますけれども、避難された方は放射線をあび続けるというわけではないので、これは、きっかけは放射線を前提とした不安ですけれども、避難された後の損害というのは不安そのものの慰謝料かというと、ちょっと違うのかなと。そちらはむしろ、避難したときの合理性があるのであれば、増加する生活費とか、そちらのほうの問題が中心になるんではないかと個人的には思うんですけれども、これは皆さんのご意見を伺えれば。そもそも賠償するかどうかも含めてですけれども。

【大塚委員】  損害の項目とかは違ってくると思うんですけれども、私が特に申し上げたかったのは、何が合理的かというところの基準は多分同じになるかなと。生涯100ミリシーベルトかなと思っているんですけれども、そこは変わらないのかなという趣旨です。

【能見会長】  はい、わかりました。ほかにいかがでしょうか。
 この生涯100ミリシーベルトという話は、私もどこかで聞いていますけれども、これは具体的に、今、どこかで動いているんですか。これはもし事務局のほうで知っているところがあれば。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  今、食品安全委員会が食品の、現在は暫定基準になってございますが、これのちゃんとした基準をつくろうということで、基準をつくるのは厚労省でございますが、厚労省から食品安全委員会に求めて、評価をしてください、食品の安全基準を決めるための線量について評価をしてくださいということで、求めに応じて食品安全委員会がその生涯線量100ミリシーベルトというのを食品の安全をつくるための基準として使うようなんです。ちょっと正確な表現は忘れましたが、基準として出しているということでございますので、一般の被曝線量の基準を議論するための数字ではないと理解しております。

【能見会長】  そうすると、食品での放射線被曝もあるし、ほかにも被曝もあるかもしれないけれども、食品についてはこれで限定しようという考え方だということになるのでしょうか?

【田口原子力損害賠償対策室次長】  すみません、どこまで正確にしゃべれるかちょっとあれなんですが、食品の安全基準を決めるに当たって個人の摂取量から逆算して、濃度といいますか、食品中の放射性物質の量を決めるわけですけれども、それを、もとのところをどういうふうに考えるかというところで、外部被曝も合わせて生涯100ミリシーベルトという数字が出てきているということなので、決してそれは、一般の外部被曝の線量基準を決めたり、こういった場で議論するのとはちょっと性質の違う数字だと理解をしております。

【能見会長】  ちょっと目的等がいろいろ違うのかもしれませんけれども、一つの基準として、基準というのは、これが直ちに外部被曝の科学的な安全性を考えるときの科学的な基準そのものではないけれども、避難したことが合理性があるのかどうかというときに判断する基準として使えるかもしれないというのが大塚委員の意見であり、私も100ミリシーベルトというのは一つの考え方だと思いますけれども、ただ、そうは思いつつ当てはめていこうとすると、生涯線量ですから、いろいろ状況は、先ほどからご意見があるように変化するというもとで、現在避難している、避難行為、それは合理性があるかどうかと判断をするときに使うのに、ちょっと直ちに使えないといいますか、少しモディファイしながら使わないと使えないというところがありそうな気がします。
 大塚委員、どうぞ。

【大塚委員】  ちょっと生涯100ミリシーベルトについて、厚生労働省が依頼したことと食品安全委員会が考えたり、答えようとしたことと若干ずれがあるとかいうことも報道では伺っていますけれども、その辺は私よりももっと専門的な方に伺ったほうがいいと思いますが、もし生涯100ミリシーベルトが無理だとした場合には、例えばこの間、中島委員がおっしゃっていたような年5ミリシーベルトとか、これは作業員の方の基準ですけれども、例えばそういうことも検討の対象にはなるかなと思います。

【能見会長】  今日は、これはもちろん非常に難しい問題であり、いろいろなご意見が出るのは当然だと思っていますので、今日確定するわけではないのですが、できるだけいろいろな意見をお出しいただけますとさらに論点を詰めるということに役立ちますので、さらにご議論をお願いできればと思います。
 では、高橋委員、どうぞ。

【高橋委員】  今までの議論もそうですが、放射線防護の場合は合理的に達成できるほど低く、低減しなければいけないという原則があって、これがなかなか理解が難しい。私も含めて、専門家以外の方には難しいところがあるんだろうと思います。
 特に、乳幼児の方、妊婦の方についてはこの原則は理解するのは難しいだろう。そういう意味で、自分の子供さんとか、これから生まれる方についてはそういうのは避けるべきであるというのは、合理的なのかなと思いますので、成年については私自身いろいろとこれから議論したいと思いますが、やはりこの(3)の属性については、明確に救済する方向で指針の中に取り込んだほうがいいのかなというのが私の感想、意見です。

【能見会長】  先に、米倉委員、どうぞ。

【米倉委員】  先ほど来、線量のところで生涯何ミリシーベルトというのが出てきているんですけれども、この考え方をこの中で入れるのは少し無理があるかなと思っています。特に刻々と変わる状況の中で皆さんが避難をしているというときには、やはりせめて年間線量、私は線量率のほうがいいと思っているんですけれども、空間線量率が無理であれば、そこから類推される年間の線量を基準にすべきであろうと思います。
 そして、20ミリシーベルトというのは、たまたま作業者の5年間を平均したときに1年当たり20ミリシーベルトというのがありますので、これが基準になっていて、これはあまりにも高過ぎるんではないかという皆さん方の感覚というのはそれなりに理解できるだろうと。特にお子さん、それから妊婦に関してそういう感覚を持たれることは、ある種の合理性はあるんだろうと思います。
 では、それをどこまで下げるかというのもなかなか難しいところで、そのときにやはり地域性というのも一つかかわってくるのかなと。先ほど、最初の段階では、どちらかというと私は距離というふうにお話をしていたんですが、この段階に入ってくるとコミュニティー自身が成り立つかどうかということも非常に大きなファクターとなってくる。そうすると、そのときに出てきた、新たにホットスポットといわれる部分が出てきて、この近辺ではある種の自主性を持って避難するということが認められているということも考えると、そういうところも含めた地域性で考えるというのも一つのやり方かなと思っています。

【能見会長】  田中委員、どうぞ。

【田中委員】  私も米倉委員と同じで、今ここの場で100ミリが合理的だということを言うのはちょっと言い過ぎ。というのは、先ほど事務局の説明がありましたけれども、食品安全委員会は内部被曝も外部被曝も合わせて100ミリということを言っていて、全体として仮に100ミリとした場合に、内部被曝、食品からとるものを、そこから100ミリのうち10ミリにするか、20ミリにするかということを決めて、それから逆算して個々の食物の濃度を決めようという考えだと私は思うんです。今がそうだから。
 だからそれが、今、米倉委員がおっしゃったように、生涯100ミリというのは国際的に認知されていると私は思っていないんです。私の知る限りにおいては。だから、それをここで決めてしまって、それが賠償の基準にしてしまうというのは少し無理があるかなと思うんです。もしそれを決めるんであれば国のほうで決めていただかないといけないし、先ほどALARAの精神でできる限りということも含めて、幼児のリスクの問題も含めて、本来は国がもっときちっと出していただかないと、それに基づいた賠償というのはできないんじゃないかという気がしています。

【能見会長】  これは前回十分議論したつもりですけれども、ここで安全かどうかの基準という、そのものを決めるわけではもちろんない。問題は、そういう基準がどこかにあるということを想定しながら、それ自体がまだ明確じゃないというところがありますけれども、そういうのを一方でにらみながら、危険性を感じて避難することに合理性があるかどうかというレベルで議論をしているので、おそらく科学的な基準そのものと完全に一致する必要はないんだと思うんですね。
 それからもう一つは、これはおそらく前回ご了解いただけた点だと思ったんですが、ただ、やっぱりまた議論してくるとどうしても科学的な放射線量の危険性というのが基礎にはありますので、どうしても関連してくるということですね。
 それから100ミリシーベルトが認知されていないという意味は、100ミリであると危険だという考え方が国際的には認知されているわけではない、そういうご趣旨ですか。一般的にそれは科学の問題だというのはわかりませんけれども、そこを崩すとなると、ちょっと私も何を科学的な根拠にしていいのかよくわからないんですけれども、一般的にはそういう基準というのはないというご理解、危険な基準というのはわかっていないということなんでしょうか。

【田中委員】  私はそういうふうに思います。

【能見会長】  はい。米倉委員、どうぞ。

【米倉委員】  私は、生涯線量としての100ミリシーベルトという考え方は基本的にとられていないだろうと私は思っています。1回100ミリシーベルトという急性被曝をしたときには、よく知られているように、0.5%のがん死亡率の増加が起こるということがわかっている。これは事実です。これを危険と考えるかどうかというのはまた別の政策の話でして、ただ、これが一つの基準になっていて、緊急時においては、100ミリシーベルトを超えるような事態になるときには強制的に避難をさせてもいい、こういうことが勧告されていますし、我が国ではそれを50ミリシーベルトと決めていたわけなんですけれども、そういうレベルの一つの指標にはなっていると思います。

【能見会長】  私自身は、あまり科学的なことについて発言するつもりはありませんけれども、業務上の線量でしたか、あれは5年間継続して100ミリシーベルトというのを基礎にしながら1年間分を割り出しているという話だったんじゃなかったですか。

【米倉委員】  年平均で20ミリシーベルト、5年間で100ミリシーベルトを超えないということになっています。

【能見会長】  その場合の100というのは何ですか。

【米倉委員】  基本的には年間50ミリシーベルトまで作業者については認められている、これは線量限度なんですけれども、5年間を通じて50ミリシーベルトでいいわけではなくて、年平均として20ミリシーベルトに抑えようという方策です。

【田中委員】  それは従事者の基準ですから、一般の人の基準ではない。

【能見会長】  はい、また違う点ですね。

【田中委員】  ええ。

【能見会長】  この科学的な基準との関係をどう考えるか、そもそも科学的な安全性というものについて基準がないんだという言い方は、ちょっと私、おかしな感じがしますけれども、それについてはさらに調べられるかどうかわかりませんが、調べてはみますけれども、ほかの論点についてももしご議論があれば、この際お願いしたいと思います。

【大塚委員】  ちょっと確認をさせてください。対象者の属性について、子供に関して特に気になるところなんですけれども、米倉委員にちょっとお伺いしておきたいんですが、低線量被曝の場合、子供と大人とでそれほど違いがないというご趣旨のことも伺ったことがありますが、ここは確認させていただきたいんですけれども、よろしいでしょうか。

【米倉委員】  要するに、そういうエビデンスがあるかどうかというところは難しいところで、ある程度以上の、1グレイを超えるような線量のところでは、子供のほうが二、三倍感受性が高いというデータは出ています。
 ただ、低線量がわからないからといって、そこで差がないという方策をとるのがいいのかどうかは難しいところがあって、子供さんが感受性が高いので、親御さんが、じゃあ20ミリシーベルトというのは怖いという感覚を持たれることにはある一定の合理性があるんじゃないかなと思います。

【大塚委員】  わかりました。ありがとうございます。

【能見会長】  これ、属性の問題はもちろん重要な問題点だと思っておりますけれども、これは科学的な根拠があるのかどうかわからないけれども、今までのような指針とか、あるいは避難のときにも、やはり妊婦、子供というものについてはある意味でより避難すべきであるというのが基本的に政府の指針の中にもあらわれていると思いますので、そんなにおかしな考え方ではないのではないかと思うんですけれども。

【大塚委員】  米倉委員に科学的なお話を伺ったものですから、それについて確認させていただきました。ありがとうございました。

【能見会長】  ほかに詰めておくべき論点というのはございますでしょうか。
 よろしいですか。ある意味で非常に大きなところで少しまだ合意ができているというものではなくて、まだ議論しなくてはいけないと思いますので、もう少し論点の詰めを行って、再度ご議論していただきたいと思います。
 そういうことでよろしいでしょうか。鎌田委員、どうぞ。

【鎌田委員】  主要な点についてのご意見をそれぞれお伺いして、もっともだとは思うんですが、この「主な論点」というペーパーの中にも書かれていることではあるんですけれども、例えば、かなり広範に、一定の基準時点が設定された後も一定の被曝線量があるような地域からの自主的避難者には避難区域から避難された方とそれほど変わらない賠償が受けられるようにする方向での検討を進めるというご意見が有力だったと思うんです。そうした方向でいった場合には、この「主な論点」の6ページの上から2つ目の・にあるように、緊急時避難準備区域においては、中間指針では、子供、妊婦、要介護者等に限って避難費用等を賠償の対象にしていたのですが、ここで今ご議論されているような考え方でいけば、この緊急時避難準備区域内のこれらの人以外の自主的避難も、基本的にほぼ同質の賠償が受けられるとなることは当然だし、その外の人たちも同じであるというふうになってくる。そうだとすると、これはちょっと、中間指針の基本的な考え方自体をもう一度考え直すところにつながるというふうなことにもなりかねない。
 それは、損害賠償の範囲とか、損害賠償を認めるためにほかにどういう付加的な要件をつけ加えるのか、こういうこととも関連するんですけれども、次回以降にもうちょっと議論を詰めて具体的な内容にしていくときに考慮すべき内容として、中間指針での考え方とどう連続性を保つのかというのも一つの重要な論点になると思います。
 それから、一定期間経過後の自主的避難について、かなり広範に、生涯100ミリシーベルトという基準になるかどうなるかわかりませんけれども、かなり低線量のところでも避難するのが合理的だということになると、それよりも前の段階の被曝線量等の詳細がわからない不安感というものを合理性の認められる範囲内で賠償の対象にするといったときに、どの範囲まで広がっていくべきなのか。今は20キロとか30キロというふうに言っていますけれども、現実には東京から自主的に避難した人もたくさんいるわけですね。隣接県からもたくさんいる。今のところデータとして出ているのは、福島県における避難の状況だけです。これは、当然に福島県以外はあまり考慮の対象にしないという前提でいるようにも推測されるのですけれども、それはどの程度の不安感を想定しているのか。一定期間経過後のほうが賠償される地理的な範囲が広いというふうなことはおかしくないのか。この辺の調整も必要だと思います。それから、特に初期の段階は、基本的には住民の不安感に基づく避難が合理的かどうかという判定をするわけで、その場合には公的に公表されたデータも問題ですけれども、同時にいろいろな情報が飛び交っている中で、住民に一定の影響を与えた情報としてどういうものがあるんだろうか。ここではアメリカのものが出ていましたけれども、そういう非公式に流布していたものも考慮に入れないと、住民の不安感がどこまで合理的かと判定するときの素材としてはまだ少し足りないのかもしれない。と同時に、そういう自主的に避難した人たちはなぜ自主的避難をしたのかということについても、何かもしその理由を直接に示すデータがあれば、そういうものをご提供いただいた上で議論を詰めていったほうがいいように思っています。
 それからもう一点は、これもこのペーパーに書いてあることですけれども、一定の被曝線量があれば自主的避難をするのが合理的だというふうに、この基準値が客観的に決まれば決まるほど、やっぱりそこに残っている人たちは強い不安を抱くようになって、しかもそれはある程度、科学的にも人体に影響がある数値だと言われれば言われるほど、そういう人たちは賠償なしでは済まなくなっていくというふうなことにもなるのかと思います。これもまた中間指針の考え方にも影響を及ぼしていくということにもなりますので、その辺の論点についても整理した上で次回は議論を進めたほうがいいのではないでしょうか。この問題だけピンポイントでやるといろいろな予期せぬ波及効果が出てしまいそうなので、その辺のところの資料がどれだけ集まるかはわかりませんけれども、ご提供いただいた上で、できれば事前にご提供いただいた上で、次の議論をしたいということで、要望でございます。

【能見会長】  いろいろな論点ありがとうございました。資料がどのぐらいあるかというのはわかりませんけれども、考え方の問題として、中間指針で考えている考え方との整合性といいますか、それを補足することはあり得るかもしれませんけれども、完全に矛盾するようなものがあると、やっぱりおかしな点があるだろうということだったと思います。いずれにせよ、そういう点も踏まえて、少し論点を整理していきたいと思います。
 ほかは、よろしいですか。大塚委員、どうぞ。

【大塚委員】  鎌田先生がおっしゃったことはよく考えなければいけないと思いますけれども、若干別のことになってしまうかもしれませんが、5ページの一番最後に書いてあることですが、この事故から一定期間経過後の自主的避難及びその他考慮すべき事項の(1)に書いてある避難しなかった者について、もし賠償を認めるとした場合には、避難指示等に関する損害の賠償を、項目としては超えないというのが普通の考え方ではないかと思いますので、その旨を個人的意見として申し上げておきたいと思います。これは多分、法的に批判があるところかと思いますけれども、私はある程度、割合的賠償のようなことを考えていかざるを得ないのか。つまり、リスクは20ミリシーベルトのところに比べると低いというふうには考えられますので、割合的賠償のようなこともどこかで考えなければいけないのかなとは思っております。以上です。

【能見会長】  どうもありがとうございました。本来、もう1つ議題があるので、時間配分を考えるべきだったかもしれませんけれども、重要なテーマですので皆さんのご意見を伺った次第です。
 それでは、これについては以上にしたいと思います。時間がありませんけれども、議題2のほうに移りたいと思います。
 この除染の問題は、理論的にも非常に難しい問題もたくさんございます。これについての論点を整理したものがございますので、説明をお願いいたします。

-------------------------------

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-10-21 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その7 日弁連会長声明

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その7 日弁連会長声明


http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2011/110930.html

-------------------------------
東京電力福島第一、第二原子力発電所事故における避難区域外の避難者に対する損害賠償に関する会長声明


東京電力福島第一、第二原子力発電所事故における避難区域外の避難者に対する損害賠償に関する会長声明原子力損害賠償紛争審査会(以下「審査会」という。)は、本年9月21日に行われた第14回審査会において、政府等によって避難区域や特定避難勧奨地点に指定された地域以外における避難者(いわゆる自主的避難者)の避難費用や精神的苦痛等に対する損害賠償について、次の2つの場合を検討した。

① 事故当初避難者が事故の置かれている状況について十分な情報がなかった時期として、4月11日(枝野幸男内閣官房長官〔当時〕が計画的避難区域及び緊急時避難準備区域の設定について発言した日)又は同月22日(屋内待避指示が解除され、計画的避難区域及び緊急時避難準備区域が設定された日)までの避難

② 事故後一定の期間が経過してからの避難

本来ならば8月5日に策定された「東京電力(株)福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定に関する中間指針」において、避難区域等以外の避難者の損害賠償についても盛り込まれるべきであったところ、この点について具体的検討を始めたこと自体は評価できる。

しかし、審査会の検討方針は、年間20mSvの被ばくに満たないと政府が判断した場所以外は本来避難の必要がないということを出発点にしていること自体に根本的な問題がある。

(1) 政府は、当連合会のみならず、多くの民間団体も繰り返し包括的なモニタリングを求めているのにもかかわらずこれを行わないまま避難区域等を設定しており、この避難区域等以外の地域であれば避難の必要がないということ自体に十分な科学的根拠が認められない。

また、現在においても、3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「本件事故」という。)の収束のめどは立っておらず、長期間にわたり放射性物質が外部に出され続け、汚染は拡大している。また、より深刻な事故に発展するおそれもいまだ否定できない状況にある。その上、汚染の状況は、風向や雨などの影響により常に変化し得る。福島県はもとより、宮城県や関東各地でもICRPの勧告する一般公衆の年間被ばく限度である年間1mSvに相当する線量率を超える放射線量が検出される状態が続いている。そのような状況下で、4月に避難区域等と設定された地域以外に健康被害をもたらす放射線被ばくの危険があると考えて避難などの行動をとることは決して不合理とはいえない。

(2) そもそも当連合会が繰り返し指摘しているように、放射線の人体や環境に対する影響は科学的に十分解明されているわけではなく、しかも、低線量被ばくによってもがんなどの発症リスクが高まる可能性は否定されず、特に子どもが成人に比べて放射線感受性が高いことに鑑みると、子どもとその親や妊婦が年間20mSv未満の被ばくに対しても不安を感じることは十分に理由のあることである。

また、日本の法規制上も、3月当たり1.3mSv(年間5.2mSv、毎時約0.6μSv)を超える放射線が検出される場所は、電離放射線障害防止規則により管理区域とされ、同区域には、必要のある者以外は立ち入ってはならない(同規則第3条第1項第1号、第4項)、原則として放射線測定器の装着が義務付けられ、外部被ばく及び内部被ばくの線量を定期的に測定して管理する仕組みになっている(同規則第8条)、18歳未満の者は、同区域で労働してはならない(年少者労働基準規則)など、同区域における活動は厳格に制限されている。

よって、当連合会は自主的に避難した者と健康不安を持ちながら避難していない者の損害賠償について以下の3点を求める。


第1に、少なくとも3月当たり1.3mSv(年間5.2mSv、毎時約0.6μSv)を超える放射線が検出された地域から避難した住民に対しては、避難費用・精神的損害について、原子力損害の範囲に含めるべきである。

第2に、5月27日には文部科学省が「学校において、当面、年間1ミリシーベルト以下を目指す」という方針を示している。今まで一般人の放射線被ばくの限度とされてきた、ICRP勧告の一般公衆の被ばく限度量である年間1mSvを超える放射線量が検出される地域から避難した者についても、少なくとも子どもとその親及び妊婦については、避難費用・精神的損害について、原子力損害の範囲に含めるべきである。

第3に、避難区域等にとどまって生活を続けてきた住民も、原子力発電所事故に伴う社会的混乱の中で多くの生活上の不利益を受け、また、放射性物質により汚染されている可能性のある地域で将来の健康上の不安などを抱えて生活することを余儀なくされているのであるから、このような生活を強いられていること自体を精神的損害として原子力損害の範囲に含めるべきである。

2011年(平成23年)9月30日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児

----------------------------------

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-10-05 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その6 論点 原子力損害賠償紛争審査会第14回資料

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その6 論点 原子力損害賠償紛争審査会第14回資料


原子力損害賠償紛争審査会(第14回)
1.日時
平成23年9月21日(水曜日) 16時00分~18時00分
2.場所
文部科学省(中央合同庁舎7号館東館) 3階講堂

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/09/21/1311103_2_2.pdf

----------------------------------
(審14)資料2
自主的避難に関する主な論点

本資料は、審査会における議論のために作成したものであり、指針の内容、損害の範囲について何ら予断を与えるものではない。

【これまでの経緯】
 8月5日に「東京電力(株)福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(以下「中間指針」という。)を決定・公表した。この中間指針では、政府による避難等の指示等(自主避難の勧告等も含む。)に基づく避難に係る被害については賠償の考え方が明らかにされたが、当該指示等に関係なく自らの判断で自主的に行った避難(以下「自主的避難」という。)に係る被害については、避難に至った状況及び事情が多岐に渡る上にその実態を明らかにすることが困難であること等から、中間指針の対象とされていない他の損害と併せ、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められることがあり得るとの一般論を示している。一定範囲の自主的避難に係る損害につき原則として相当因果関係が認められる類型として指針で明示することが可能か否か、審査会において引き続き検討を行うこととされた。

【論点】
1.自主的避難に関する検討の方向性
 一般的には、政府による避難等指示の対象区域外に居住する者であっても、放射線被曝の危険を回避するための避難行動が社会通念上合理的であると認められる場合には、その避難費用等は、賠償すべき損害となり得る。このような避難の合理性を判断するための適切な基準について検討する。
 自主的避難については、そもそも指針によって具体的な基準を示して類型化することが可能か、それとも一般的な基準のみを指針で示し、個別具体的な事情に応じて相当因果関係を判断することが適当か、も含めて検討する必要がある。
 このため、これまでに得られた情報に基づき、次の2つのケースに分けて検討してはどうか。
① 事故当初の時期に、自らの置かれている状況について十分な情報がないと考えたことから大量の放射性物質の放出による被曝を回避するために避難を選択した場合
② ①の時期の経過後に、比較的低線量の放射線による健康への影響を可能な限り減らしたいと考えたことから避難を選択した場合

2.事故当初の自主的避難について
 事故当初は、原子力発電所の原子炉建屋で爆発が起きて一時的にある程度の放射性物質が放出されたとみられる。また、原子力発電所の状況等に応じて、避難指示等の範囲が拡大されるなどの状況であった。周辺の住民にとっても、自らの置かれている状況(水素爆発の再発可能性、放射線量等)に関する情報は、現在と比べても相当不足していたと考えられる。こうした中で、政府による避難指示等の対象ではないが、住民が自主的避難を行ったことについてどう考えるか。

(1)対象区域
 自主的避難の合理性を判断する際に、区域による具体的基準を設けることが可能か。
その際、住民にとって一定の生活圏を構成する行政区域ごとに検討することが考えられるのではないか。あるいは、他の分け方(例えば、東京電力(株)福島第一原子力発電所(以下「第一原発」という。)からの距離等)で検討するべきか。
 行政区域ごとに検討する場合、考慮すべき要素として、事故発生地からの距離、実際の線量、自主的避難者数、その人口比率等が考えられるのではないか。(例えば、避難指示等の区域に近接している相双地区及びいわき地区は、事故当初に自主的避難したことについて他の区域と異なると言えるか。また、県中地区、県北地区、県南地区についても一定割合の自主的避難者がいるが、どう考えるか。)
 ただし、これらの検討にあたっては、地震・津波によって家屋等に被害が生じたり、地域の電力・水道等のインフラが停止したりしたために避難した者が少なからずいることにも留意が必要である。
(3月15日時点での自主的避難者数(福島県災害対策本部の調査結果))
いわき地区(15,377人(人口比4.5%))、相双地区(12,205人(人口比約24%))、県中地区(6,448人(人口比1.2%))、県北地区(5,062人(人口比1.0%))、県南地区(1,062人(人口比0.7%))会津地区(102人(人口比0.04%))、南会津地区(不明)

(2)対象時期
 自主的避難をした時期によって、合理性を判断する基準とすることが可能か。事故発生直後は、住民が得られる情報が十分ではなかったが、日を重ねるにつれて原子炉建屋の状況が明らかになり、3月16日以降、文部科学省及び福島県より、各地域における放射線量に関する情報が発表(3月19日以降、モニタリングの地点が充実)され、県内の新聞でも報道された。また、政府による避難指示等については、3月15日までに20km圏内への避難指示及び20~30km圏内への屋内退避指示が出され、その後、3月25日には、官房長官より、屋内退避区域における自主避難の促進、避難指示を想定した諸準備の加速について公表された。また、4月22日には、屋内退避指示が解除されるとともに、新たに警戒区域、計画的避難区域及び緊急時避難準備区域が設定された。こうした中で、
①どの時点までをこの「事故当初の時期」として議論すべきか。
②その「事故当初の時期」の中で、自主的避難をする場合は一様に扱ってよいか、それとも時期により扱いを変えるべきか。
③自主的避難の後、避難先に滞在する期間により扱いを変えるべきか。この際、後に検討する「事故当初の時期経過後の自主的避難」との関係をどう考えるか。

(事故発生以降の政府の対応)
3月11日 第一原発1号機から半径2km圏内の住民に避難指示(20:50)
その後、第一原発から半径3km圏内の住民に避難指示(21:23)
第一原発から半径10km圏内の住民に屋内退避指示(21:23)
3月12日 第一原発から半径10km圏内の住民に避難指示(5:44)
東京電力(株)福島第二原子力発電所(以下「第二原発」)から半径3km圏内の住民に避難指示(7:45)
第二原発から半径10km圏内の住民に屋内退避指示(7:45)
第一原発1号機にて爆発音(15:36)
その後、半径10km圏内の住民に避難指示(17:39)
第一原発から半径20km圏内の住民に対する避難指示(18:25)
3月14日 第一原発3号機にて爆発音(11:01)
3月15日 第一原発2号機にて爆発音(6:00頃)
第一原発から半径20~30km圏内の住民に屋内退避指示(11:00)
注水作業に直接関わりのない作業員等の一時撤退
3月15日頃~ 福島県が第一原発から半径50km圏内の市町村に安定ヨウ素剤を配備
(3月16日 米国政府による自国民に対する80km圏外への退避勧告)
3月18日 INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)評価について、レベル5と暫定評価
3月25日 屋内退避区域の住民に対する自主避難の促進の必要性及び避難準備の可能性について発言(官房長官記者会見)
4月11日 計画的避難区域及び緊急時避難準備区域の設定に関して発言(官房長官記者会見)
4月12日 INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)評価について、レベル7と暫定評価
4月21日 避難区域を、第二原発から半径10km圏内から半径8km圏内に変更
第一原発から半径20km圏内を警戒区域に設定
4月22日 第一原発から半径20kmから30km圏内に設定されていた屋内退避指示を解除。計画的避難区域及び緊急時避難準備区域を設定
6月30日以降 特定避難勧奨地点を指定

(3)損害項目
 政府による避難等の指示等によって避難した者については、避難費用、営業損害、就労不能等に係る損害、精神的損害等の損害項目について賠償すべき損害と認めている。一方、自主的避難については、自ら避難を選択したことにより被害が生じた、また自主的避難をした者の住む地域には避難をせずに滞在していた者がいた、という点で政府による避難等の指示等の場合とは異なる。これらを踏まえ、もし自主的避難に係る損害を認める場合、どのような損害項目を賠償の対象とすべきか。

(4)対象者の属性
 幼い子供を持つ親や妊婦は、事故当初、安全性に関する十分な情報がない中で、放射線による子供の健康への影響を懸念して避難を選択する場合も考えられる。幼い子供や妊婦に係る自主的避難については、それ以外の者が行ったものと分けて考える必要があるか。

3.事故から一定期間経過後の自主的避難について
 事故から一定期間が経過し、原子力発電所のプラントの状況も報道等を通じて事故当初より明らかにされ、一部の区域等(計画的避難区域、特定避難勧奨地点等)を除いて自らの生活圏内の放射線量も年間20ミリシーベルト以下と予測されることが確認されたが、少しでも被曝線量を低減させるために自主的避難することについてどう考えるか。

(1)対象区域、対象時期等
 放射線量が年間20ミリシーベルト以下の地域では、放射線量との関係で緊急時の避難をする必要がないために政府は避難指示を行っていない。一方、年間20ミリシーベルト以下の地域であっても、通常よりも比較的高い放射線量の地域については、長期間その放射線量を維持したまま生活することは想定されていない。このため、政府及び自治体は、住民の安全を前提に、除染等により生活環境の整備を進めている。こうした除染等の環境整備が計画的に行われる中で、現時点で放射線量が通常よりも高いことを理由に、自主的避難することをどう考えるか。その対象区域、対象時期についてどう考えるか。

(2)損害項目
 2.(3)と同様に、自主的避難については、自ら避難を選択したことにより被害が生じた、また自主的避難をした者の住む地域には避難をせずに滞在していた者がいたとの事情を踏まえ、もし自主的避難に係る損害を認める場合、どのような損害項目を賠償の対象とすべきか。

(3)対象者の属性
 幼い子供を持つ親や妊婦は、放射線による子供の健康への影響を懸念して避難を選択する場合が考えられるが、放射線量等に関する情報が事故当初よりは得られる状況での判断である点で、前述の事故当初の場合と異なる。この状況で、幼い子供や妊婦に係る自主的避難について、それ以外の者が行ったものと分けて考える必要があるか。

4.その他考慮すべき事項
(1)避難しなかった者との関係
・ 自主的避難者の数よりも避難せずに滞在していた者の数がはるかに多い中で、避難した者に損害を賠償することをどう考えるか。
・ また、避難しなかった者が不安に感じたまま滞在することがあると考えられるが、これをどう考えるか。
・ 一方、中間指針では実際に避難した者について「避難等に係る精神的苦痛」(すなわち、「避難による自宅以外での生活」又は「屋内退避による行動の自由の制限等」により「正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛」)が賠償対象と認められていることとの関係をどう考えるか。

(2)避難指示等の区域における損害との関係
自主的避難に関する損害の範囲については、仮に損害を認める場合、中間指針で示されている避難指示等に係る損害の範囲との関係をどう考えるか。例えば、以下の論点が考えられる。
・ 自主的避難に関する損害項目や範囲に関して、避難指示等に関する損害の賠償を超えないようにすべきか、それとも、両者の関係を考えず議論してよいか。
・ 避難指示等が解除された後に同指示等区域から避難した場合をどう考えるか。その他の区域からの自主的避難と同等に扱うべきか。
・ 中間指針では、緊急時避難準備区域から6月20日以降に避難を開始した場合は、子供、妊婦、要介護者、入院患者等に限って賠償の対象とされているが、このこととの関係をどう考えるか。

(3)対象者及びその損害の認定の困難さ
 自主的避難の形態は様々であり、一定期間に一定区域にいた者が移動した際、原子力損害として認められるかどうかの認定が困難な場合がある。証明の事務負担を緩和しつつ適切に賠償するための方策は考えられるか。


----------------------------------

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-09-22 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その5 原子力損害賠償紛争審査会第13回の議論

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その5 原子力損害賠償紛争審査会第13回の議論


http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/gijiroku/1310893.htm

原子力損害賠償紛争審査会(第13回) 議事録
平成23年8月5日(金曜日)14時00分~16時30分

-------------------------------

<略>

【能見会長】  はい。
 それでは、次の議題3に移りたいと思います。先ほど途中で申し上げましたように、この自主避難に関連する問題というのは、いろいろ広がりもあり、深みもあり、重要であり、かつ難しい問題を含んでおりますので、私としては、今日の審査会でその扱い方について合意ができるのであれば、もちろん中間指針の中に含めてもいいと思っていたのですが、そう簡単にはいかないだろうと思いましたので、中間指針とは切り離して、ここで別に時間をとって議論していただきたいと思った次第です。
 前回も、ほんとうに短い時間でしたけれども、ご議論いただきまして、少し議論が出ましたので、そのときの議論などをも参考にしながら、自主避難に関する論点を整理したペーパーを用意しました。では、このペーパーについて、事務局から説明をお願いできますか。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  短いものでございますので、そのまま読ませていただきます。資料3でございます。
 自主避難に関する論点といたしまして、紛争審査会が策定する指針は、賠償すべき損害と認められる一定の類型の損害の範囲を示すもので、被災者の迅速な救済を図るという観点から、相当因果関係が認められ、賠償すべき損害として整理可能なものから順次指針として策定してきた。中間指針では、現段階で明らかになっている原子力損害の全体像として、避難に係る損害については、年間20ミリシーベルトを超える被曝のおそれのある区域・地点や今後起こり得る緊急時に避難が求められる区域など、政府の避難指示等の有無を基準として、避難をする合理性が認められるものを指針の対象とすることとした。
 2でございますが、一方、これ以外にも、避難等の対象区域外に住居があって、自主避難をしている方が多数いると考えられ、これらの者の避難費用等が賠償すべき損害と認められるか否かの問題がある。
 3でございますが、一般的には、指針の対象区域に居住する者ではなくとも、被曝の危険を回避するための避難行動が社会通念上合理的であると認められる場合には、その避難費用等は、賠償すべき損害となり得る。このような避難の合理性を判断するための基準としては、例えば、本件事故直後では原子力発電所からの距離等を基準に、それから、その後においては一般的には放射線量等を基準とすることが考えられるが、政府が避難指示等の措置を何ら講じない地点において、自主的な避難をすることが合理的か否かについて判断するための適切な基準があるかどうかが問題である。
 4でございます。政府は、年間20ミリシーベルトを計画的避難の指示や特定避難勧奨地点の指定の際の基準として用いており、これを上回るおそれのある地域・地点については、避難指示等の措置を講じることとしている。このような政府の基準は下回るが、相当量の放射線量率が観測された場合などにおいて、放射能の危険を懸念して自主的に避難することの合理性が認め得るか否かについては、いわゆる風評被害の場合と類似した点もある。また、妊婦、子供等対象者の範囲、検査費用、避難費用等損害項目の範囲、避難指示等が解除された区域との整合性など考慮すべき事項がある、ということでございます。
 申しわけございませんが、大臣にいらしていただきましたので、先ほどちょうど中間指針をおまとめいただいたところでございますので、木大臣のほうからですね。

【能見会長】  そうですね。では、第3の議題に入る前に、木大臣がお見えですので、先ほど中間指針が決定されたことをご報告申し上げ、大臣には、一言ごあいさつをいただければと思います。

【木文部科学大臣】  木義明でございます。
 能見会長はじめ、委員の皆様方には、4月15日の第1回開催以来、大変ご多忙中の中で精力的にご審議を重ねていただきましたこと、そして、本日、中間取りまとめをいただいたこと、厚くお礼を申し上げます。ありがとうございます。
 ご承知のとおり、国会におきましても、被害者早期救済法、いわゆる政府仮払い法、そして賠償支援機構法が成立いたしました。被災者の早期救済を図るために、損害賠償を円滑に進める枠組みが整ったわけでございます。文部科学省といたしましては、関係省庁と連携をしながら、この指針に沿って、迅速に公正かつ適正な賠償が行われるように最大限の努力をしてまいります。
 今回の事故は、周辺住民の皆さんはもとより、極めて広範囲、そして、さまざまな被害をもたらしました。そういう意味において、我が国において例のない大変厳しいものでございました。したがって、国民、社会的にも大きな関心が示される中で、指針の取りまとめにおきましては、大変な難しい判断もおありであったのではないかと思っております。多岐にわたって検討をしていただきました会長をはじめ、委員の皆さん方に、改めて皆様方のご見識、ご尽力に敬意を表する次第でございます。
 一方、事故はまだ収束への途上にあります。今後も新たな被害が生じる可能性は排除できません。また、避難区域の解除後における損害賠償の考え方など、今後も指針の追加とか、あるいは改訂をする必要が生じることが考えられます。したがいまして、大変なご労苦の中で、またご多忙の中で、精力的にこれまで審議をいただきましたが、引き続き委員の皆様におかれましては、お知恵を拝借できますように、今後とものご協力をお願いを申し上げます。
 改めて、会長をはじめ、委員の皆さん方に、心からお礼を申し上げます。ほんとうにありがとうございました。

【能見会長】  大臣、どうもありがとうございました。
 それでは、第3の議題についてご議論いただきたいと思います。これは、先ほども言いましたように、非常に多くの問題点が関連しておりまして、難しい問題で、本来であれば、私から若干整理してお話したほうがいいのかもしれませんけど、あえてそれはしないで、皆様に自由なご議論をしていただきたいと思います。その上で、もし必要であれば、若干議論の整理をしたいと思います。そういうことですので、皆様のほうから、どなたでもご議論をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 中島委員、どうぞ。

【中島委員】  この自主避難に関する論点の第4の段落を前提にしますと、この自主避難の問題は、異質な2つの問題が含まれているように思われます。1つは、第4の段落の最初の3行に関するんですが、政府は、国際防護委員会の基準に従って、20ミリから100ミリの間の中の一番の安全値である20ミリを基準に、この避難の地点・範囲を指示されておりますけれども、瞬間的には20ミリの毎時に換算した値が出ているけれども、その後収束したために避難地域に入っていない区域がある。
 そうしますと、瞬間的に、このままだと20ミリになりそうだという値が出たときに避難したけれども、結果的に政府の指示の区域に入っていない地域、例を挙げますと、福島市がそうですけれども、福島県の公表されているものを見ますと、20ミリシーベルト、これは年間20ミリですから、毎時に直しますと、単純に割りますと2.8マイクロシーベルトですが、文科省の基準で言いますと、外に出る時間が1日8時間だとして計算しますと、3.幾つのマイクロシーベルトが基準になると思うんですが、瞬間的には福島市では、福島県のホームページから見ますと、事故直後は8とか9マイクロシーベルトの値が1週間ほど続いておりまして、専門家に聞きましたら、おそらく半減期が8日間のヨウ素ではないかと。というお話もありますが、しかし、一般の人はわかりませんので、この値からいくと、もう当然、政府指示の20ミリになると思って避難したけれども、結果的に福島は現在も警戒区域にも入っておりませんし、避難等の区域に入っておりません。
 このように、政府の基準に満ちている、瞬間的にはそうなる可能性もあったけれども、避難区域に入っていない地域をどうするかという問題と、さらにその下に風評被害と類似した点があるという指摘がありますが、さらに、そこに至らないけれども、何らかの危険を感じて、もう少し別の基準もあるようですので、当時はいろんな流言飛語もあったと思いますけれども、インターネット等で、国際的な基準から見ると危ないといううわさも流れていたりして、それに基づいて、妊婦や乳幼児を持っている、放射線感受性の高い家族のある人は、予防的に避難した人もいる。その場合に、政府の基準20ミリには達しないけれども、それに達しない基準で逃げた人の判断は不合理だったのかどうか。合理性があったのではないかという、この2つの問題、異質な問題があるように思います。
 この適切な基準があるかどうかが難しいというのは、風評被害の政府の20ミリに満たない基準でも逃げた、避難した場合はどうかというほうの問題ではないかと思うんですが、瞬間的には20ミリに達する、これは計算してみますと、3.8マイクロシーベルトを超えていた地域というのは、当時、政府の避難指示以外にもあったわけで、それに基づいて逃げた、避難した人は、当然、これは含まれてよいのではないかと思いますし、それ以下の基準でも、国際的にはいろんな説もあるようですが、それに近い値で危険を感じて逃げた場合はどうかというところがあると思います。
 これに関しては、問題の指摘のほかに意見も申し上げたいんですが。

【能見会長】  どうぞ、結構です。

【中島委員】  この20ミリより下のラインについてはどうかと、ここが大変難しいところかと思いますが、前回、草間委員が示唆されましたのは、労災の基準があるじゃないかとおっしゃられたものですから、労災認定基準をちょっと調べてみたんですが、昭和51年11月8日の労働省の通達では、白血病の認定基準では、年間5ミリシーベルトの被曝があった場合には、業務起因性を認めると。要するに、被曝との因果関係を認めるという基準になっている。
 この5ミリという値は、ちょうど、近い数字としては、放射線管理区域、これは文科省のQ&Aでは、観点が違うというふうになっていますけれども、放射線を扱う施設内では、5.2ミリという基準だったと思いますが、それに近い数字になっている。偶然なのか、付合している。このあたりも、1つの手がかりになるのではないかと思っております。

【能見会長】  どうもありがとうございました。
 基準のどれが適切かという問題のほかに、まず2つを分けて考えるべきではないかということを今議論されたわけですが、こういった点について、ほかの委員はどういうふうにお考えでしょうか。
 大塚委員、どうぞ。

【大塚委員】  今、中島委員が言われた2つというのは、すみません、ちょっと確認させてください。2つというのは、何と何ですか。

【中島委員】  年間20ミリシーベルトに相当する値に達していたけれども、その瞬間は達していたけれども、その記録が、その観測が続かなかったために、その後、結局、特定避難勧奨地点に入っていないところがあると。しかし、瞬間的に高い数値が出たために避難した場合と、そこに至らないけれども避難した人というのは、少し異質なのではないかという問題です。

【大塚委員】  わかりました。すみません。
 私も2つに分けたほうがいいと思っていたんですけど、中島委員の意見とわりと近いとは思いますが、事故直後に、3月中に不安を感じて避難をした方について、合理的な行動であれば避難費用を出してもいいと考えますけれども、少なくとも避難費用は出したほうがいいと思いますけれども、そこで、どこで区切るかというのはちょっと問題になってしまいますので、今、中島委員が言われたのを、幾つかの基準を出していただいたので、それが基準になるかなと思いますし、当時は、アメリカは80キロと言っていたので、何を信ずるかというのは多分わからない中で行動された方がいらっしゃることは事実だと思いますので、そのどこまでを合理的と見るかというのを考えなくてはいけないと思っています。
 中島委員の意見と多少別の観点で申しますと、この問題は、何が合理的かということはもちろん私も大事だと思っているんですけれども、コアになる問題というのは、むしろ不安だと思うんですね。不安で行動したことをどう見るかとか、あるいは、今でも20ミリシーベルトはいっていないけれども、避難区域のそばに住んでいる方も含めて、不安に感じておられる方をどう見るかという、避難されることをどう見るかということだと思います。これは下級審の判決で幾つか出ていて、別に固まっているわけではないですけれども、平穏生活権の問題というのが幾つか認められたものがございますので、廃棄物処分場のそばで井戸水を飲んでいる方とかですけれども、それと同じような問題ではないかと思います。
 ただ、単に不安を感じているから直ちに賠償を払うということには、残念ながらなりませんので、ある程度やはり合理性とか合理的な基準というのは必要にはなってくると思います。単に通常人だったら不安に感じるというだけで賠償するわけにはいかないと思いますけれども、その合理的な基準が何かというのは、検討する必要があると思いまして、今、中島委員が言われたものは、その中の幾つかの例ということになるのではないかと思います。
 私自身も2つ分けたほうがいいと思っているんですけど、さっきの中島委員の議論とは多少違いますけれども、事故直後、3月中に不安を感じて出ていかれた、避難された方と、それ以降に避難した方とか、避難はされていないけれども不安を感じていらっしゃる方というのは、ちょっと区別したほうがいいかなと思っています。3月中に水素爆発が起こったので、びっくりして避難した方というのは、より強い保護に値するのではないかという感じはいたします。後者のほうも、もちろん、ある程度精神的損害を感じておられるので、それはやはりある程度の合理的な基準は必要だと思いますし、払っていいが、かなり限られた額になるかとは思いますが、それらの2種類の区分けができるのではないかと考えております。
 いずれにしても、20ミリシーベルトを超えるところに住んでおられた方で避難された方に比べると、リスクは小さいことは小さいので、全額を払うとかという話には残念ながらならないとは思いますので、賠償額は限定されることにはなると思うということも、追加して申し上げておきたいところでございます。
 それから、あと、特に子どもですね。子どもと妊婦の方が、特に払う必要があるのではないかと思います。

【能見会長】  先に、米倉委員、どうぞ。

【米倉委員】  線量に関してはちょっと置いておきまして、違う視点で少し議論を出させていただきたいと思います。それは、この中間指針で今まで見てきたものが、基本的には、政府が決めた避難ということによって、避難を余儀なくされたという方、あるいは、出荷制限ということによって損害を受けた、あるいは、若干違うと思うんですが、風評被害ということで、これもある意味で第三者が関与して、こういう被害を受けたということに今までなってきたわけです。そこに限られてきたので、この論点の1番目の一番下にある、「政府の避難指示等の有無を基準として」というふうに書かれてはいますけれども、そこで、この審査会で議論してきたところは、やむを得ず避難を強制されたというところに対する損害賠償をするという、そういう基準になっているかと思います。
 自主避難ということになりますと、これは本人が動いたことということで、別の視点が入ってきているように思いますので、ここまで広めるのであれば、それにかかわるようなかなり広い範囲のものも一緒に考える必要があるだろうというふうに考えています。
 先ほど幾つか議論があった中で、では年間20ミリシーベルトというのに対してどのように考えるかということがあるんですけれども、中島委員が言われたように、実際に住民の方々がそこで持っている情報は、年間20ミリシーベルトではなくて、ある地点の線量率が幾らであったかということなので、もし何らかの基準を認めるとすれば、そのときそのときの線量率、これが1つ基準になるかなと。それから、水素爆発等によって、それなりの恐怖心を感じられたということ。それから、先ほどから話があるように、お子さんがいらっしゃるときに、放射線に対する不安を感じられた。そういう幾つかのファクターが出てくるので、そういうものを勘案して、何か基準を決めていくということになるのかなというように感じています。

【能見会長】  では、草間委員、どうぞ。

【草間委員】  まず、自主避難に関してですけれども、中間指針の中で、4月22日に一応解除になっても、とりあえず残っている方たちについて、7月末日まで認めましょうと。これは、ある意味、ちょっと逆の考え方をすれば、自主避難をしているということになると思うんですね。だから、これを認めたということになると、今議論になっている自主避難についても、何らかの形で認めざるを得ないんじゃないかなと思います。だから、自主避難について認めるということは賛成なんですけれども、ここでその基準を決めるということは大変難しいと思うんですね。
 だから、先ほど、4月22日の取扱いについて、特段の理由がある場合にという形だったと思うんです。だから、特段の理由の中に、例えば線量率の高いところとか、そういったような形で認識することにしないと、ここで数値的な基準を決めますと、さまざまな、ただでさえダブルスタンダートが問題になっているときに、ダブルスタンダートになる可能性もあるので、私は1つの基準というよりも、特段の理由のときに、例えば線量率が高いとか、そういったことを入れるような形が1つあるのかなと思っています。
 それと、先ほど、子どもとか妊婦がいるから云々という話ですけれども、ICRPも含めまして、20から100というのは、緊急時の公衆の避難等の措置をするときに、20から100の巾の中でということなんですけれども、限度も含めまして、ICRPは、公衆の限度等を決めるときに、なぜ職業人より低くしているか。もちろん、直接的な利益があるかないかというのもですけれども、公衆の中には子どもや妊婦がいるということで、低くしているんですね。だから、20ミリというのは、子どもも妊婦も含めて、一応20から100の間で考えたらどうでしょうということですので、そういうふうにご理解いただきたいと思います。
 なぜ公衆の限度を低くしているかということにつきましては、ICRPがPublication9を出したときに、そういったことをきっちり明示しております。ICRP勧告というのは、2007年勧告が最新ですけれども、一応ずっと継続性を持って勧告をしてきているので、ぜひその辺はお考えいただきたいと思います。
 いずれにしましても、ここで基準を決めるということではなくて、特段の理由のときに、先ほどあったような数値を用いるということをお考えいただいたらどうかなと思います。
 それと、先ほどの労災のことですけれども、誤解があるといけないんですけれども、5ミリシーベルト掛ける業務年数という形です。それで、5ミリシーベルトというのは、先ほどお話ありましたように、昭和51年の基発810号すなわち基準局通達で出されているんですけれども、そのときの5ミリというのは、当時、職業人の限度が今でいう50ミリだったんですね。それで、その10分の1というのと、当時は――今は公衆の限度というのは1ミリシーベルトですけれども、この1ミリというのは、1980年のICRPのパリ声明で1ミリというのが出たんですけれども、それまでは公衆の限度というのは1年間に5ミリだったんですね。一応管理区域が云々ではなくて、職業人の10分の1、あるいは、公衆の限度の今でいう5ミリ、そういったのが参考になったのではないかと考えております。

【能見会長】  ほかにいかがでしょうか。
 今、草間委員から、この審査会で基準を設けることは難しいというお話があったのですが、基準という場合に、おそらく分けて考えなくてはいけない問題があると思うのですが、これは大塚委員の意見とも少し関係するところですが、この審査会で安全性の基準そのものを決めることは当然できないし、この審査会の権限の範囲内でもない。ここの審査会で考えることは、何らかの安全の基準がありうるのであれば、それが決まっていなくても、それを横目でにらみながらといいますか、それを想定しながらも、その安全性の基準そのものとはそれとは別に、いわば独自に、避難等をするのが合理的な状況なのかどうかを決めること、その基準を決めることだろうと思うのです。この判断自体もなかなか難しいということは、おっしゃるとおりだと思います。まずはっきりさせておきたいことは、われわれが議論するのは安全基準そのものとはやはり違うということです。自主避難が合理性があるといえる基準は何かを考えたらいい。
 この問題については、この審査会では必ずしも最初から課題として正面にこれを据えて議論してきていないので、十分な議論もなされてないし、また、十分な調査もされておりません。ICRPの勧告についても検討しなければならないと思いますが、そのようなことをここで議論すべきかどうかも、はっきりしません。ともかくも検討しなければならない問題が多いが、どれも十分に検討していない状況です。そこで、放射線について全くの門外漢である私などは疑問がたくさんあって、それを1つ1つ解明していきたいと思っています。
 先ほど中島委員が、爆発直後にとにかく危ないと思って逃げるという問題と、それから、もうちょっと落ちついてというか、少し長期的な視野のもとで――中島委員は長期的な視野とはおっしゃらなかったかもしれないけど、1ミリシーベルトから20ミリシーベルトの間の問題をどう考えるというのは、一応別に考えたいということでした。
 前者のほうは、私はそれなりに何か基準が出せそうな気がするのですが、後者の1から20ミリシーベルトの問題については、これも専門の先生方がおられるので、いろいろ伺いたいのですけれども、そもそもICRPの緊急時の、20から100ミリシーベルトという基準ですか、その基準と、それから、現状被曝状況というのでしょうか、ある程度落ちつくという状況のもとでの1から20ミリシーベルトという基準があると思いますけれども、一体どっちでそもそも考えるべきなのかわかっておりません。これは安全性の基準の問題で、先ほどこの審査会で判断すべきだと言った風評の問題とは違いますけれども、いろいろな判断をする上での前提問題として、ICRPの勧告を当てはめた場合に、現状をどのように考えたらよいのか、そもそも私にはよくわからないところがあり、それも1つ勉強したいと思っております。
 それから、もう一つは、危険を感じるといいますか、不安を感じるということについてですが――大塚委員は、先ほど、ごみ焼却場の場合の平穏生活権の話をされましたが、今回の原子力事故の場合は、放射線量が1ミリシーベルトから20ミリシーベルトまでの間であっても、おそらく単なる不安の問題ではなくて、ある種の健康の危険というものがあるけれども、それがどのぐらいかわからないという状況での不安ではないかと思うので、ごみ焼却場の近隣で平穏生活が害されるというのとは違うのではないかと思います。では1から20ミリシーベルトの放射線の危険というのはどの程度のものなのか。私、素人の考え方ですけれども、間違っていたら指摘していただきたいんですが、仮に年間10ミリシーベルトという状況で、それが時間とともにだんだん減るのかもしれませんけど、仮にその年間被曝量が10年間続くと、合計では100ミリシーベルトになる。100ミリシーベルトというのは、一般的にはがんの発生する有意な差をもたらす値であると言われているのではないかと思います。そこで、10年間とかより長期の時間的スパンを考えると、現在の放射線量の危険というのはどうなのかという問題があります。子どもですと、10年間ここで暮らしていると危ないんじゃないかと考えるというのが不合理なのか合理的な心配なのか、というような問題があるような気がするのです。こうした問題もこの審査会で議論して決着がつくという問題ではないかもしれませんが、審査会では十分議論して、それなりに我々が納得できる考え方を出していきたいと思います。
 今、直ちにこの場で答えいただくのが難しければ、また後で十分資料をそろえてからでも結構なんですが、先ほどのICRPの勧告でいう20から100ミリシーベルトという基準と1から20ミリシーベルトという基準では、どっちがどういう場面で適用されるか。これはどういうふうに考えたらよろしいんですか。

【草間委員】  ICRPは3つのバンドをつくっているわけですね。1ミリ以下と、1から20と、20から100。
 20から100というのは、いわゆる緊急時の公衆の被曝の上限です。緊急時被曝というのは、いろいろ定義の仕方があると思うんですけれども、1つの定義の仕方として、線源が全くコントロールされていない状況での被曝です。だから、福島原子力発電所の場合を考えますと、今3つのステップに分けて安定化をしましょうという形で考えているわけですけれども、とりあえずステップ1の段階までは線源がコントロールされていないというふうに考えていいのではないでしょうか。これを国がどう考えるかの問題ですけれども、緊急時というのは、いわゆる線源がコントロールされていない状態での被曝というわけですので、どこまでを緊急時と考えるかなんですね。
 それで、1から20というのは、緊急時以外の残存汚染に適用されるものです。今、事故による汚染は、特にセシウムのように半減期の長いものですので、残存汚染という形で残るわけですので。だから、緊急時と残存汚染というポイントをどこで分けるかというところに大きく関係してくるんだろうと思うんですね。

【能見会長】  原子炉自体は、今の状況だと完全にコントロールはされていないかもしれないけど、新たな爆発が生じるという状況ではなくて、そういう意味では、各地の線量も少しずつ減る状況で、そういう状況というのは、緊急時ではなくて、もう既に次の段階だというふうには言えないんですか。

【草間委員】  個人的な考えですけれども、私は、原子炉収束を3つのステップで考えましょうと、保安院等が言っております。第1ステップまでは、まだ原子炉が水素爆発を起こすかもしれないという形で、すごく不安定だったわけですけれども、とりあえず第1ステップは完了しましたということをもうきっちり言っておられるので、だから、第1ステップが終わった段階では、もう1から20のところで考えるということに移行していいのではないかなと思っています。
 防災指針等では、この前田中委員が言ったように、外部被曝では一応50ミリと決められているのですけれども、今回の事故では20ミリを判断の基準とした。これは妥当な判断だったんだろうと思っています。しかし、現在は次の段階に移行したほうがよいと思っております。

【能見会長】  田中委員、どうぞ。

【田中委員】  少し整理してみたいと思うんですが、我が国の防災指針では、予測が50ミリシーベルトを超えるようなときは避難をさせるということになっていて、それは、今、20キロ圏内がそれに該当していると思います。20から50ミリの予測がある場合には屋内退避、今は避難準備区域というんですか、そういうことになると思います。
 今回の事故の特徴は、その外側に実際に20ミリを超えるような汚染区域が出てきたということで、これが計画的避難区域になっています。実際には、当初は日本政府は、防災指針を適用して、住民の避難とか屋内退避を指示していました。その後しばらくたって、ICRPのこの事故に関しての勧告が出てきて、それを日本政府が検討して、それで、20ミリを境界として避難させるとか、避難させないというところが出てきたので、先ほど中島委員が言いましたように、当初の予測という意味では、50ミリだった。当初から20ミリが基準になっていたということはないんだと思います。
 ですから、計画的避難区域の指示が出たのは、4月の半ばぐらいでしたでしたか。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  22日です。

【田中委員】  22日ですかね。その時点で20ミリという値が非常に明確に出て、そこからはもう20ミリの上か下かという議論になってきているので。だから、先ほど中島委員のおっしゃったように、実際に空間の線量率がある程度わかってきたのは、多分、3月の20日過ぎぐらいだと思いますので、それまではほとんど国民はよくわからない状態にあって、避難されたんだと思います。
 そこのあたりをどう見るかなんですが、非常に難しい問題ですけれども、私もある程度、あるレベル以上、ある種の認定的なことが必要になるのかもしれませんけれども、自主避難について、ある程度そういうことを踏まえて、国の基準もいろいろ動いたというか、必ずしもアプリオリに決まっていなかったし、その情報が国民に正確に伝わっていなかったという意味において、ある程度そこは配慮する必要があるのではないか。特に子どもについての不安というのは、いまだに消えていませんので、そういう点はあるかなと思いますけれども、今、どこにどうすべきかというのは、私自身は考えあぐねているところです。

【能見会長】  ほかに。では、まず大塚委員、どうそ。次に、鎌田委員、お願いします。

【大塚委員】  2つほど申し上げておきたいんですけれども、自主的に避難することが合理的であったかというのは、その時点で考えなければいけないので、今からさかのぼって考えるようなことでは多分ないと思うんですよね。今、20ミリかどうかが基準として用いられているからと言って、当時の行動の合理性について一定の基準に照らして厳密に考えなければいけないことかどうかというのは、そもそも問題があるとは思います。ただ、だからといって、対象者がものすごく広がっていくことは、もちろん問題があるので、限定をしなくてはいけないとは思っていますが、合理的かどうかというのは、ほんとうにぎりぎり、今考えて詰めることかというと、やっぱり当時合理的だったかどうかということを考えなくてはいけないのではないかなというのが1点ございます。
 もう1点ですけれども、会長がおっしゃったように、廃棄物処分場のケースと違って、こちらのほうが健康に危険がある場合とも言えると確かに思うんですけれども、ただ、聞くところによると、100ミリシーベルトでも0.5パーセントがんの確率が上がるということだそうなので、その下については、そもそもよくわからない、残念ながらしきい値がないという話は伺っていますので、そういう意味では、損害賠償からみたときに法的に健康への危険があると言い切れるかはなかなか難しく、不安の問題だと思うんです。不安というのは法的に扱いにくいものですから、私も不安を取り上げたいと特に思っているわけではないのですけれど、やっぱりある程度不安ということを考えざるを得ないのかなというふうに、私自身は考えております。

【能見会長】  では、鎌田委員、どうぞ。

【鎌田委員】  これまでの各委員のご意見でも、自主避難について、一応一定の配慮をしなければいけないという点では、おおむねコンセンサスがあるんだろうと思うんですね。しかし、どの範囲まで相当因果関係の範囲内にあるものと認めるべきかということを考えるのは、実際、非常に難しいんだと思います。客観的な基準があれば、この指針の基本的な考え方の上に乗っていきやすくなるんですけれども、その基準も、安全基準を定める、あるいは安全基準の合理性について判断する能力は、この審査会には基本的にはないということ。
 それから、自主避難することが適切かどうかと、今大塚委員がおっしゃられたことと共通なのかどうか、自信はありませんけれども、今はこういう状態だったら自主避難したほうがいいとか悪いとかという、こういう行動指針的な基準をつくるのも、ここの役割ではないわけです。
損害賠償の観点から言えば、過去の自主避難について、どこまでが相当因果関係の範囲内であったか。これが行政的な措置によって避難を余儀なくされているわけではないということで言えば、合理的な回避行動として認められるかどうかというのが基準になるんだろうと思います。そのときには、やっぱりその時点時点でどうであったかですから、時期と場所と、それから、幼児、妊婦その他であるかどうかという人の属性とで見ていかなければいけないんだと思いますし、同時に、一般に言われる安全基準の考え方、あるいは、その時々に公表されていたデータや情報との関連というので、かなりきめ細かく見ていかなければいけない。こういう点についても、多分、一般原則では大方のコンセンサスがあるんだろうと思いますので、そういうふうな基本的な考え方の中で、どこまで中身を詰めていけるかという作業を、私はこの審査会で少し詰めて議論をして、合理的な指針の基準ができていけば、それはつくっていくべきではないかなと思います。
 同時に、この資料の中にも書いてありますけれども、自主避難というのは1つの象徴的な事柄で、避難はしていないけれども、避難等の対象区域の隣接地域の人たちの検査費用等も、今の基準、指針からは明示的には挙げられていなくて、一般基準の中で判断してくださいと言われているわけですけど、これは問題の性質としてはほぼ同等でありますから、そういった関連した問題とのバランス等も考えながら、第一弾として出した中間指針の周辺部にあって、合理的に救済をしなければいけないというふうに皆さんが考えることについて、第2段階での指針づくりという作業を始めてはいかがかと考えております。

【能見会長】  どうぞ、田中委員。

【田中委員】  現実に自主避難だけが今取り上げられていますけれども、実際にこの地域のほとんど95パーセントから99パーセントぐらいの人が、避難したくてもできないから、そのまま生活しているという実態も、自主避難の人の救済をする場合には、少しそこも配慮しないといけないのではないかという感じがするので、その辺もぜひご議論いただければと思います。

【能見会長】  今ご指摘の点も非常に重要な観点で、この問題は、従来のこの指針で扱っていた枠組みとやっぱり違う切り口なんですね。20キロ圏、30キロ圏は、それなりにある程度予想される放射線被曝線量を前提にはしていたのかもしれませんけれども、ある意味で単純に距離でもって切っていて、具体的にどの程度の汚染があったかというのとは違う観点から切った範囲です。それに対して、今問題となっているのは、放射線の被曝そのものに関連する――そのものではないかもしれないけれども、それをもとにしての不安ということです。そうなってきますと、今おっしゃったように、自主避難だけが問題ではなくて、そこに残っている人たちのほうが、相変わらず放射線の被曝は続くわけですから、被曝量が多くなり、そういう人たちについてはどう考えるのかという問題も関係してくる。その人たちの健康、健診とか検査の問題とか、場合によっては、その地に残らざるを得なくて、ずっと被曝を続けているため、それが一定の量以上だと、そのような状況のもとでの精神的な損害というものもあるかもしれない。非常に問題の範囲が広くて、そういう意味で、先ほど鎌田委員が言われたように、なかなか簡単には、今すぐには決めにくい。しかし、自主避難についても、この審査会で取り組もうということになっても、どういう観点から、どういうことを検討したらいいか、それからそのためにはま、いろんな必要な調査なども必要になってくると思います。何をしたらいいのか、議論のためにはどんな準備をしたらよいのか、そんな点についても少し議論を進めていただければと思いますが、いかがでしょうか。
 米倉委員、どうぞ。

【米倉委員】  少し関連した話になるかもしれないんですが、最初に私がお話ししたように、もともとこの最初の指針、今回の中間指針というのが、ある意味で、政府によって決められた、強制された、それに対する損害賠償という形で始まっているのに対して、今回の事故によって起こった被害という視点ではあまり議論がされてこなかったように思います。自主避難というのは、その1つの例だと思うんですけれども、例えば、幾つか抜けている視点があるように思います。今回、一時立入でいろんな方が協力しておられるのですが、その方々が健康被害を起こしたり、放射線ではなくて、熱中症、あるいはいろいろな病気で倒れられる。
一時立入の住民の方々は、これはおそらく避難地域の方なので、そちらでみられると思うんですけれども、その作業に従事している方、これはボランタリーで来ておられる方もたくさんいらっしゃるので、そういう中での被害というのをどんなふうにみていくのとか、幾つかそういうものがあるような気がしますので、全体として今回中間指針で見た、その周辺部にあるような、放射線あるいは原発事故による被害の中で、それに近い部分というのは、もう一度取りまとめて、何か議論するということをしないと、これだけを取り上げるというのはどうなのかなということを感じます。
 それから、もう1点、先ほど言われたように、まさにそのとおりで、最初の避難地域においても避難できなかった方の問題を取り上げたんですけれども、同じように、自主避難されて、すぐ近くにおられる方というのは非常に不安を持っていらっしゃる。そういう方々に対しても、やはり何らかの検査費用等の補てんはしてあげなくてはいけない。そういうことも含めて、いろいろ幅広い議論が要るかなというふうに感じました。

【能見会長】  はい。
 ほかにいかがでしょうか。
 いろいろなご意見が出まして、先ほど鎌田委員がある程度整理をしてくださいましたが、私も、皆さんの大体のご意見の方向として、この自主避難の問題については、その範囲とか基準はともかくとして、賠償の対象になり得る損害がある可能性がある。それを議論しよう、とそういうところは大体皆さん共通したご意見だったように思います。そして議論するとして、取り上げる問題ないし視点は、自主避難だけか、もうちょっと広い視点で、中間指針では落ちている問題を拾うべきか――中間指針は中間指針で、早急にまとめなくてはいけなかったことで、これは当然必要かつ合理的な作業だったわけですが、難しくてすぐに議論できないために中間指針の対象から落ちているものがあります。そういう問題も取り上げて、自主避難の問題と一緒に今後議論する。そういうことが皆さんの共通のご意見であったように思います。
 ただ、今後、一体どういうことを調べた上でどのように議論したらいいのか、あるいは、自主避難の基準についてはなかなか難しいんですけど、何か基準を考える上で参考になるような考え方があるのかないのか、こうした点についても、少し議論を続けていきたいと思っております。今日、そういう結論といいますか、今後作業を続けていくということのご了解が得られるのであれば、今後少し必要な資料を集め、調べても見ようと思います、ただ、こうした作業ということになると、おそらく来週やるというわけにはいかなくて、いろいろ調べなくてはいけないものがたくさんあると思いますので、今後議論を継続する時期については少し検討させていただければと思います。必ずこの審査会でもう一度、適切な時期に取り上げてご議論いただくということでいかがでしょうか。
 どうぞ、大塚委員。

【大塚委員】  今のおまとめで全く異論ないんですけれども、ひょっとしたら委員の方の中でも多少ニュアンスの違いがあると思うんですけど、私が多少違っているのは、広く関連したものをいろいろ取り上げることは非常に重要だともちろん思っているんですけれども、おそらく自主避難を3月中にされた方というのは、ほかの方に比べて、やはり考えなくてはいけない度合いは高いのではないかなというふうに私自身は思っていまして、濃淡が多少あるのかなというふうに思います。それは「合理的に行動したというふうに考えられれば」ということではありますが、私はそういう意見を持っているということだけちょっと申し上げます。

【能見会長】  この点も若干ニュアンスの差があって、私は、大塚委員が爆発直後にすぐに避難された方と、それから――そちらのほうが保護の程度が強いのではないかというご意見だったと思いますけれども、どちらが保護の程度が高いのか、私はまだ判断しかねていますけれども、しばらくたって、やっぱり放射線量が相当あるというので避難されるという方も、それもそれなりに合理的な、かえってある程度の情報をもとにしての行動なので、合理的な行動と言いやすい側面もあり、一概にどちらがということは言いにくいような気もします。その点も含めて、もうちょっと検討させていただければと思います。
 鎌田委員、どうぞ。

【鎌田委員】  一言。
 先ほど、損害の性質と時期と地域によって、かなりきめ細かく見なければいけないということと、それから、自主避難だけに限らないというふうに申し上げましたけれども、逆に、自主避難も含めて、審査会が議論の対象にしたということは、何でも幅広く全部賠償するという姿勢を示したということでは決してないわけで、やっぱり相当因果関係の範囲というのが基本にあって、それの中で類型的にとらえられるものから順番にやってきた。それは、明らかに抜け落ちているものがあるのは、最初から承知の上なんですけれども、そういうものの中で、特別に判断の基準を明示していったほうが、今後の展開の上で、被害者の救済を迅速かつ適正に進める上で合理的であり望ましいというものについては、可能な範囲で拾い上げていこうということで、無限に拡大しようというふうな趣旨で申し上げたということではありませんので、念のため申し上げます。

【能見会長】  今の点は全くおっしゃるとおりで、ここで賠償の対象とするのは、あくまでやはり原子力損害というカテゴリーのものであり、かつまた、相当因果関係の範囲内のものということですので、当然、おのずから限度があるということでございます。
 これは私の個人的な感想ですけれども、今までこの審査会でもって、避難費用をはじめとして、医療損害、それから、風評損害も含めて、それなりに幅広く実際に生じた損害というのを賠償の対象としてまいりまして、そういう意味では、指針として十分寄与するものだというふうに思います。しかし、改めて今この問題を考えてみますと、人の健康そのものに関連する被害、健康の被害のおそれがあるので逃げるというものを含めてですが、そちらについては、今日の議論があったように難しい問題があるために、十分扱ってこなかったなという感想を持っております。そういうことで、この自主避難の問題、関連する問題を含めて、人の健康そのものに関わる問題について、もっと切り込んで議論する、十分資料を集めて議論できればということでございます。
 一応私のまとめとしては、そういうことですけれども、ほかに何かご意見があればお願いします。よろしゅうございますか。
 それでは、まだ今後も大変な作業が続くことになりますが、とりあえず今日の審議はこのくらいにしたいと思います。次回の日程ということは特に今確定的には申し上げられないのですが、事務局のほうから何か補足できますか。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  会長のお言葉もありましたように、何を調査すべきか、あるいは、議論のためのどういうものを準備するかというものも含めて、会長と相談させていただいた上で、委員の皆様と日程を調整させていただきたいと思います。

【能見会長】  以上で今日の審査会を終わりたいと思います。どうも今日は長い時間ありがとうございました。これで閉会します。

―― 了 ――

-----------------------------------

2011-09-06 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その4

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その4


 その1で、述べたところをもう少し考えてみると、


〔自主避難者特有の損害の切り分け〕

 避難者の損害として
---------------------
1 非財産的損害
(1)生命、身体の損害
(2)精神的損害
2 財産的損害
(1)積極損害(財物汚損、避難交通費、宿泊費、生活費増加分なと)
(2)消極損害(休業、失業、廃業等による減収)
---------------------

 ここで自主避難者としては、避難指定等の区域外であるが、多少とも〔年間1ミリ程度?〕汚染ある地域から避難した人を想定する。汚染が全くないのに、危惧して、そこから避難した人は含まないとする。

1 非財産的損害
(1)生命、身体の損害
 自主避難者であると、そこにとどまっている人であるとを問わず、被ばくが原因で健康被害等の損害が発生した場合は、当然賠償の対象となる。

(2)精神的損害
 自主避難者にも、区域内からの避難者と同様に、避難による生活の不便や、いつ戻れるのかという不安など精神的苦痛が発生している。この損害は、避難していない人には生じない。そのかわりに、避難者は、汚染地域で生活することによる健康不安等による精神的損害は避難時点からは免れることができる。
 他方、避難しないで、その汚染地域にとどまって生活している人は、避難による精神的苦痛はないが、汚染地域での生活による健康不安による精神的苦痛が発生している可能性がある。
 結局、精神的損害については、汚染がある限り、自主避難するか否かにかかわらず、一定程度は発生するものといえるだろう。
 そして、その程度は、汚染の程度によって、相違があるだろうから、汚染が大きい地域から小さい地域へ、精神的損害の大きさも漸減すると考える余地があろう。
 そういう意味で、一定の汚染地域については、なんらかの不便や不安を強いているのだから、自主避難するか否かにかかわらず、汚染度に応じた精神的損害の賠償の余地は考えられて当然である。


2 財産的損害
(1)積極損害
①財物汚損
 居住地域の不動産や自動車など財物に、汚染がある場合は、自主避難者も、そこにとどまる人も同様に、減価分ないし除染費用相当額の額の損害は受けているはずで、これは同様である。これも汚染度によって、その大小の差はあろうが、その損害の有無、金額評価は、他の損害に比べて困難ではなかろう。
②避難交通費、宿泊費、生活費増加分等の避難費用
 これは自主避難者に発生する損害であって、その大きさは、汚染度の大きさとは直接関係がない。ただし、避難の判断の合理性については、その汚染度によって、差異があろう。

(2)消極損害(休業、失業、廃業等による減収)
①まず、自主避難者の勤め先が、風評被害等の原発事故と相当因果関係のある損害を被って業績が悪くなり、減給や倒産・廃業に至った場合は、もともと自主避難者が、その場にとどまっていても被ったはずの損害であって、たまたま倒産前に退職して逃げたからといって、その賠償を得られなくなり、その分加害者が得をするというのは公平ではないので、その場合の自主避難者の減収分のうち、もとの企業の廃業等の時点からの分は、当然賠償されるべきものと思われる。
②自ら廃業して自主避難した場合は、まずその廃業の決定が、原発事故と因果関係のある顧客の減少や風評被害などによる減収の場合は、自主避難するか否かにかかわらず、被る損害であるから、廃業決定が合理的なものである限り、当然それによる減収は賠償されるべきものと思われる。要するに、仕事も減ってきて、もうけにもならないので、店をたたみ、そこに住む理由もないので、自分や子供などの健康のことを考えて、指定等区域外の汚染地域から、外に出たような場合である。
③上の①や②のような場合以外で、そこにとどまっていれば、減収、失職等はなかったはずなのに、そこから避難したために、減収、失職等に至った場合は、やはり自主避難者の特有の損害となる。


 結局、自主避難者に特有の問題として考慮すべきは、財産的損害のうち避難交通費、宿泊費、生活費増加分等の避難費用(2(1)②)と、避難が原因で生じた減収分〔そこにとどまっていれば生じなかったであろう減収分〕(2(2)③)であって、これらは避難しない人には発生しない損害である。




〔要件のどこで、どのように問題とするか〕

 第十三回紛争審査会の資料を見ると、紛争審査会は、自主避難者の問題を、風評被害による損害の場合と、パラレルに考えて、避難者の判断の合理性を、因果関係の「相当性」の問題とするかのようである。
 風評被害の場合に、第三者である消費者の回避行動の合理性を問題として、相当因果関係を判断しようとする態度に問題があることは、このあたりで論じた。

 自主避難者の問題では、被害者自身の回避行動の〔一般通常人を基準とした〕合理性を相当因果関係の認定において問題としようとするようである。

 まず、原発事故に関して、この種の問題が、裁判で争われた事案はないようなので、自主避難について、風評被害の理屈と同様に考えて、判断している裁判例はないはずである。

 客観的に汚染が無いのに,疑心暗鬼になって汚染があると思いこんで,回避行動に出た場合なら,個人の主観的な思いこみであって,一般通常人を基準とした合理的判断ではないと言えるかもしれないが、現実に放射性物質が飛散して,汚染がある場合で,しかも,その危険性の認識の程度や,それに対する対処方法や受忍限度について社会的コンセンサスが確立しているわけでもないとき,何が一般通常人にとって合理的といえるのかが判然としない。

 科学的根拠と個人の判断の合理性との関係は以下のようになろう。

1 避難者の判断時において、リスクが客観的〔科学的〕に明かな場合
2 避難者の判断時においては不明であったが、事後的にリスクが明らかになった場合
3 避難者の判断時において不明であり、今もリスクが不明である場合

 1の場合は、問題は少なかろう。科学的根拠に照らして、被害者の判断が合理的なものか否かを判断すればよい。ただし、判断時点での被害者の認識、知識等の主観や、その知識の入手可能性は問題とされる余地はある。
 2の場合は、事後的に危険であったと判明したなら、その避難判断は合理的であったということになる。事後的に安全であると判明した場合は、客観的には不合理であったということなるが、やはり判断時点での被害者の認識、知識等の主観や、その知識の入手可能性は問題とされよう。
 3の場合は、危険性が不明である以上、それを前提に、その時点での限られた情報を基に、どのように判断するのが一般人として合理的かという問題となろうか。汚染度との関係でいえば、汚染度が高い地域の人の避難判断の方が、汚染度が低い地域の人の避難判断よりも、結果において〔将来的に〕、合理的と判断される可能性が高いということにはなろう。

 3の場合でも、外部被ばくについては、低線量被ばくに関し放射線管理で用いられるしきい値無し直線仮説(LNT仮説)を前提に、この程度の低線量被ばくなら直線仮説で考えても、この程度の発ガン率の上昇にとどまると推定して、そのリスクの程度で、避難するのが一般に合理的といえるのかということが問題とされて、避難の合理性が判断される余地が無いでもない。
 ただ内部被ばくについては、健康被害に至る機序の相違から、同様に考えられないかもしれない。もっとも食物を通じて体内に入る放射性物質については、地域の汚染度に関係なく、注意や検査等である程度は低減させることができるかもしれない。ただし、汚染地域に近い方が、基準値以下といえどもある程度汚染された水や食物が出回る危険性は高いだろうから、地域とリクスの結びつきはあろう。また、ほこりや微粒子の飛散などで、空気中に漂う物質については、やはり汚染度が高い地域の方がリスクはより高いだろう。

 結局、これらについて、厳密な科学的なリスク判断が未だできないとなると、その時点での限られた情報を基に、どのように判断するのが一般人として合理的かという問題になるが、科学的なリスク認識について確定的なものがない以上、一般人としては、危険か安全かわからないのなら、できるだけ近寄りたくない、逃げておきたいというのが通常の判断といえなくもない。
 また、仮に自主避難者が少数派だったとしても、そのことから避難判断が一般通常人の判断ではないとすることはできないだろう。気持ちとしては、判断としては、逃げたいが、経済的理由等の現実の避難の困難性を考慮したり、土地のへの愛着から、そこにとどまっている人もいるわけで、避難判断の通常性、合理性と、現実の避難者の有無や数とは関係がない。財産的損害だけの問題なら、将来10万円の損害を出すのがいやで、今1000万円の予防策を講じるというは不合理といえるが、将来自分や子の生命身体に生ずるかもしれない損害を回避するために、今財産的損害を被るというのは、その金額如何で、個人としての判断の合理性が変化するというものではなかろう。なお避難の経済的困難性と、避難判断の合理性を関係づけると、場合によっては、貧困者はとどまるのが合理的、富裕者は避難するのが合理的という結論になる可能性すらある。
 

 他方、危険かどうか分からないので、予防のため逃げるというだけでは避難判断の合理性の立証としては足りず、それを越えて積極的に、その地域で住むことの危険性の有無程度を立証し、それが故に自己の避難判断は通常人を基準として合理的であると主張すべきとなると、立証責任の面では、相当因果関係は原則として被害者が主張立証すべきものなので、結局、居住地域の危険の有無程度をある立証できない限りは、避難判断の合理性は立証できず、したがって、相当因果関係なしとして、立証責任を負う被害者が負けることになる。これでもかまわないという考え方もあろう。


 結局、避難判断の合理性を、〔割合的因果関係を認めない限り〕あるか無いかの判断になる因果関係の側から見ていくと、立証責任で被害者が負けるか、法律的判断としてどこかで線を引いて、その線内なら避難判断は一般通常人として合理的で相当因果関係あり、その外は不合理なものであって相当因果関係無しとして、ばっさり切るということになる。しかし、これほど強くはっきりした効果を持つ線を、今の時点で、紛争審査会が引くことができるのだろうか〔せいぜいICRPの平常時の年間1ミリ基準?〕。
 


 そこで、これを被害者の回避行動の過剰性、損害発生拡大についての被害者の判断の関与の問題として、民法722条2項類推の問題とできないか。

 まず、風評被害では、第三者の回避行動が問題となるので、このような過失相殺やその類推の問題として扱う余地はない。この点は、自主避難者の問題と異なっている。

 過失相殺については、不法行為の場合、当事者の主張の有無にかかわらず、賠償額の判定に際して、職権で斟酌できるので、主張立証責任の厳密な意味での分配はない?

 民法722条2項の「過失」の意義については、不法行為の成立要件となる注意義務違反=709条の「過失」と同義ではなく、公平の観念に基づいて賠償額を減額することが妥当なような不注意で足りるとされる。

 さらに、被害者の過失や落ち度や非難可能性とは関係のない、被害者の素因(通常予想される多様性の範囲を超えた個人の特殊な体質や病気など)についても、公平の理念から民法722条2項類推による減額がありうる。

 危険か安全か不明の場合には、特に、それが人の生命身体等の重要な法益に関するものであるときは、予防的にそれを避けようとするのが合理的判断ともいえるので、回避行動について、被害者を責めるべき理由はないが、かといって、未だ危険性安全性について確定的な判断基準がない場合に、避難によって発生した損害を加害者に現時点で全部賠償させるのは公平ではないという考え方もあろう。
 この点、何年後か何十年後かに、その回避行動が合理的であったと判明したとき、つまり、そこにとどまった人の中に健康被害が出ているような場合や、新たな科学的知見で低線量被ばくの悪影響が立証された場合、自主避難者の行動は、今避難することによって、後の健康被害発生を防いだともいえ、被害者のみならず、加害者にとっても利益をもたらした行動であったとされるかもしれない。他方、何十年経っても健康に対する影響について差異がなく、あるいは、低線量被ばくについて無影響であることが科学的に一般に認められるようなった場合は、今の自主避難は、結果において不合理で、被害者が自らの判断でその損害を発生拡大させたものにすぎず、本来的には賠償を要しなかったものということになろう。
 結局、これがどちらか判明しない時点で、一方にその損害を全部負わせるのは公平でないと判断するなら、汚染度と感受性〔子供、妊婦等〕との組み合わせで、リスクのレベルを階層化して、賠償額か賠償率に差異を設けて、一部賠償していく、その根拠として民法722条2項の類推を考えるという余地があるかもしれない。地域の汚染度高く、また類型的にリスクが高い人の場合は、避難判断の合理性がより高く、そうでもない人は、避難判断の合理性は低いと見て、それを根拠に、素因減額のようなものを考える?。
 要するに、原発事故由来の放射線で、年間1ミリを越えるような地域については、ある程度の危惧が生じるのは当然として、相当因果関係ありとし、ただ、その自主避難行為については、線量や人の類型によって、判断の合理性に「程度」の差があろうから、賠償率、賠償額について差を設ける?。


 もっとも、客観的なリスク判断が容易でないということから、民法722条2項の類推で、中間的解決を図るというのは見たことがない。そもそも、低線量被ばくのリスク判断が困難なのは、被害者の支配下にある事情というよりは、もっぱら加害者が作出した極めて異例な状況〔大規模原発事故による放射性物質の広汎な地域への飛散によって、低線量の被ばくが長期にわたって続く可能性があるという状況〕が持つ特質なのであって、その点を捉えて、加害者側が、避難者の健康等への影響なきこと、あるいは発生するリスクの程度が十分に低いこと〔それにもかかわらず避難者が過剰な反応で避難したという事実〕をある程度立証しない限りは、減額の余地はなく、原則として満額の賠償責任を負うと考える余地もあろう。


2011-08-08 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その3 紛争審査会論点

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その3 紛争審査会論点


http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/08/05/1309438_6_1.pdf
-----------------------------
(審13)資料3
自主避難に関する論点

1.紛争審査会が策定する指針は、賠償すべき損害と認められる一定の類型の損害の範囲を示すもので、被災者の迅速な救済を図るという観点から、相当因果関係が認められ、賠償すべき損害として整理可能なものから順次指針として策定してきた。中間指針では、現段階で明らかになっている原子力損害の全体像として、避難に係る損害については、年間20mSvを超える被曝のおそれのある区域・地点や今後起こり得る緊急時に避難が求められる区域など、政府の避難指示等の有無を基準として、避難をする合理性が認められるものを指針の対象とすることとした。
2.一方、これ以外にも、避難等の対象区域外に住居があって放射能の危険を懸念して自主的に避難している者が多数いると考えられ、これらの者の避難費用等が賠償すべき損害と認められるか否かの問題がある。
3.一般的には、指針の対象区域に居住する者ではなくとも、被曝の危険を回避するための避難行動が社会通念上合理的であると認められる場合には、その避難費用等は、賠償すべき損害となり得る。このような避難の合理性を判断するための基準としては、例えば,本件事故直後においては一般的には事故のあった原子力発電所からの距離等を基準とすることが考えられ,その後においては一般的には避難を開始する地点の放射線量等を基準とすることが考えられるが、政府が避難指示等の措置を何ら講じない地点において、自主的な避難をすることが合理的か否かについて判断する適切な基準があるかどうかが問題である。
4.政府は、年間20mSvを計画的避難の指示や特定避難勧奨地点の指定の際の基準として用いており、これを上回るおそれのある地域・地点については、避難指示等の措置を講じることとしている。このような政府の基準は下回るが、相当量の放射線量率が観測された場合などにおいて、放射能の危険を懸念して自主的に避難することの合理性が認め得るか否かについては、いわゆる風評被害の場合と類似した点もある。また、妊婦,子供等対象者の範囲、検査費用,避難費用等損害項目の範囲、避難指示等が解除された区域との整合性など考慮すべき事項がある。


--------------------------------


テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-08-07 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その2 原子力損害賠償紛争審査会第12回での議論

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その2 原子力損害賠償紛争審査会第12回での議論



第12回原子力損害賠償紛争審査会
平成23年7月29日(金曜日)13時00分~16時00分
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/attach/1309439.htm

----------------------------------
【能見会長】  今の点について、一応、今回の枠組みというのは、避難指示等に係る損害ということで、一定の区域が指示指定されていて、その範囲に入る人についての避難にかかわった損害、あるいは精神的損害、それから健康診査等の損害も入ってくるわけですが、そういうもので区切っておりまして、恐らく大きな問題としては、今、鎌田委員も言われたし、あるいは前回もそういう趣旨だったのかもしれませんが、その外で生じる損害、具体的には、指定された区域外で避難した人の、いわゆる自主避難というふうに一般的に言われているようですが、そういう人たちの避難のためにかかった損害、あるいは精神的損害、その他の損害、こういうものをどうするかという大きな問題があるわけですね。これはぜひ皆さんのご意見を聞きたいと思って、この指針はそういうところまで今は踏み込んでいないわけですが、ぜひご意見を聞きたいと思っていた点でございます
 ちょっとその問題に移りましたので、少し時間をとるかもしれませんけれども、ぜひ皆さんのご意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。中島委員、どうぞ。

【中島委員】  この指針の構造が、全体として人と物を分けて、人については避難指示、物については出荷制限、そういう公的な何らかの制限に基づいて、それに基づく賠償を支払うという構造になっていますけれども、ただ、物については、出荷制限のほかに風評被害を認めて、食品の表示の方法などの観点から、実際に出荷制限のあるものより少し外側の部分まで、損害賠償の対象に広げているわけですけれども、人については広げていないというところが根本的な問題の所在だと思うんですが、もし農産物なんかの風評損害と同じように、その回避行動が合理的であると見られる場合には、物の風評損害と同じような考えで、人の、大塚先生のご専門の予防原則のような考えで、その回避行動、自主的な避難行動が合理的と見られる場合には、風評損害と同じ理屈で、賠償の対象に入れるかどうかということかと思うんですが
 ただ、そうなると、物の場合は、食品表示が県単位であるとか、いろいろな観点で、わりと合理的な範囲の線引きをしやすかったんですけれども、人の、どこまでの自主避難が合理的な、あるいは予防原則で言うなら、賢明なる回避行動として合理的な範囲と言えるかというのが、その線を引く範囲が大変難しいように思うんです。そこに、やはり、この指針になかなか入れにくいという問題があるように思うんですけれども。
 例えば、牧草に放射性物質がかかっている県全部となりますと、埼玉とかもみんな入ってしまう。そうすると、埼玉県の人がさらに避難したら、その費用も入るのかということになると大変難しい。その線引きの基準なりをつくるのが非常に難しい。
 さらにもっと言うと、科学的な根拠に基づいて、どの範囲の避難行動が合理的と。もっと言うと、後発的な晩発被害を防ぐための行動として合理的と言えるのかというのが、線引きを表現するのが難しいように思うので、そこに問題があるように思います。

【能見会長】  ほかに。田中委員から、先にどうぞ。

【田中委員】  1つのロジックの組み立てを整理したいと思うんですが、今、20ミリシーベルト以下はいろいろな考えがあって、国際的なICRPの勧告を受けて、その場で住み続けるという判断を国がしたわけですね。ただし、それは今後できるだけ低くする努力をするということも前提になっているかと思うんですが、そういうことで、今、国がとっているのは20ミリを超えるか、超えないかというところで避難という、ある種の強制的なあれを出しているんですが、20以下で、限りなく低いところでも、限りなくと言ったらおかしいけれども、通常よりは少し高いんですけれども、私が住んでいる茨城県の水戸近くでも、もう通常より三、四倍高いわけですから、そういうところまで全部入れるのかということになると、ほんとうに今度はロジックですね。20ミリで住むというところの国の放射線被曝についての考え方を根本から考え直さなきゃいけないのかもしれないという気がするんですね。だから、どこかで線は引かなきゃいけないんじゃないかというのが、私の率直な印象です
 だから、特定避難勧奨地点って、最近出たところは、隣同士で避難したり、避難しなかったりというところがあって、そういう今のような問題が逆にかなり厳しく、コミュニティーの中で問題になっているんですが、その辺は微妙に難しいところはあるんですけれども、基本は、やっぱり20ミリを超えるか超えないかというところかと思うんですけどね。
 それで、当然、国なり何なりが低くする努力はすべきということではないかと思うので、あんまり広げたら、先ほど中島委員が言ったように、今、東京の人とかでも、避難している人がおられますから、きりがないなという感じはします。

【能見会長】  大塚委員。

【大塚委員】  中島委員や田中委員が言われたことと基本的に同じ方向性の議論をしたいと思っているんですけれども、おそらく、この避難区域のすぐそばに住んでいらっしゃる方は、お子さんとかがいらっしゃれば、避難したほうがいいかなと思う気持ちは非常によくわかるところなものですから、それをどう扱うかという問題かと思っています。
 あまりほかの例を挙げると、ちょっとご迷惑かもしれないんですけれども、水俣病の救済に関して、結構、長い間紛糾してきたという歴史が環境法のほうではございますけれども、その1つの大きな原因が、1,600万から1,800万という補償協定にあたる人だけを認定して、それ以外の人は救済しなかったということが、部分的な救済はしていたんですけれども、基本的には救済しなかったということが、結構、問題を長引かせてきた一つの大きな理由になっていたわけですけれども、今回、20ミリシーベルトのところで切って、そのすぐそばの人は、ちょっとでも外れれば全く何も払わないということをすると、似たような結果にならないかどうかが個人的には危惧しているところがございます。
 ただ、その考え方は、どんどん広げればいいということには必ずしもならなくて、先ほど、中島委員や田中委員が気にされていたように、今ある20ミリシーベルトの範囲のちょっと外にもう少し広い範囲の、何ミリシーベルトかは科学的に決めなくちゃいけませんから、私が申し上げられるようなことでもございませんが、例えば範囲を決めて、その部分については、例えば全額ではなくて、一定の額を出すというような方向性の議論が、水俣病に関しては、多分早くからやっておけば大分よかったなというところもございまして、一律に、ここからは切ってここからはゼロという、オール・オア・ナッシングの議論というのは、なかなかどうなのかなというところはあるかと思います
 ただ、20ミリシーベルトより少し少ない何ミリシーベルトというのは考えて、その範囲を決定するというようなことが、この審査会ができることかどうかよくわかりませんので、それは政府にお願いをするということになってしまうんじゃないかと思いますが。
 だから、問題をちょっと広げてしまって大変恐縮なんですけれども、私の意見としては、そんなことを考えております。

【能見会長】  ほかに何かご意見ございますか。鎌田委員、どうぞ。

【鎌田委員】  明確な方針を出せるわけではないんですけれども、今の議論の中には、大きく2つの要素が含まれていると思うんです。どこまでが賠償されるべき損害の範囲かという問題については、この「はじめに」の指針の位置づけの中にも書いてあるし、たびたび確認もさせていただいているんですけれども、この指針の中で、具体的に賠償されるべき損害の範囲として摘示されなかったものは、賠償されるべき損害の範囲から外れているんだというわけではないということ、つまり、どこまでが賠償されるべき損害の範囲かということのすべてを決めるのが、この指針の役割ではないということが大前提だと思うんですね。
 その上で、しかし、できるだけ指針の中できめ細かく、漏れなく決まっていたほうが、被害者救済はより円滑になるだろうと思いますけれども、今議論があるような、かなり微妙なところまで全部決まらないと指針が出せないということになれば、それだけ、この指針に従った迅速な救済というのが遅れていくので、もともと第一次指針のときから、少なくとも最低限、だれが見てもこれだけは必ず賠償されるべきだという疑問のないところから順に拾い上げていきましょうと。しかも、運用するたびに、一見、指針で賠償されるべきものとされているようだけれども、個別に審査しなければいけないというものでないところから、決められるところから決めていけば、少なくとも、その部分からは早く救済されるということで、一次指針、二次指針、そして、この中間指針というふうにきたんだと。
 だから、ここに書かれていないものは賠償しないというふうな宣言をしているという読まれ方はされては困るというのが大前提であって、その上で、ここではっきりとさせにくいものについて、この中間指針の段階でどう取り扱うか。あるいは、今度、中間指針の次に、どういうふうなステップを歩んでいくかということで、この中にも、たしか指針の位置づけの3にも、そういう趣旨で書いてあったというふうに記憶するんですけれども、ここで直ちに明確な答えが出せないものであっても、今後のさまざまな調査、あるいは知見の展開によって、あるものについては類型的に、これは賠償の範囲ということが固まってくれば、類型的に指針を追加していけばいいし、そこまで類型化できないし、非常に個別的な判断に依拠せざるを得ないものというのは、やっぱりこの審査会、あるいはそのもとに今後できるところでの和解の仲介でしたでしょうか、そういうふうなものを通じて、個別的な判断をしながら、それぞれの事案に応じた解決をしていく。それを積み上げていく中で、また一定の類型的な指針ができれば、指針の追加をしていくというふうに、賠償されるべき損害の範囲、イコール指針に書かれて、具体的に項目として挙げられたものだという考えを大前提にしないで、できるものから迅速にと。そして、できる限り、明確化できるものは、逐次明確化していくという形で進めていかれるのがよろしいと思っています。
 今の問題については、じゃ、どうかと言われると、今この時点では、ちょっと明確な答えを私自身も持ち合わせておりませんけれども、少なくとも、今のこの中間指針の対象範囲に入っている中では、健康調査的なものを入れるということには、全く異存はございません。

【能見会長】  今、いろいろな委員から議論が出てまいりましたけれども、やっぱり幾つかの問題点があると思うんですけれども、非常にごく一般論としては、今、鎌田委員が言われたように、ここで書いていないものについても、相当因果関係がある損害というのは当然あり得るので、その賠償を否定するものではないということは当然だと思うんですが、今、問題となっている自主避難等については、全く個別的な事情の問題かというと、そうではなくて、おそらく一定の基準があるんだろうと思うんですね。
 基準といいますと、今、20ミリシーベルトというのが、少なくとも政府の策定した指針といいますか、避難のための指針だと、それが避難をすることを求めるといいますか、あるいは避難をすることが合理的だという基準として政府がつくっている基準というのがあると。今、自主避難している人たちが問題にしているのは、そこに至らない、20ミリシーベルト以下であっても、不安を感じる合理的な程度の汚染というのがあるんだと。したがって、そういう20ミリシーベルト以下であっても避難したという場合について、それは賠償対象に入るべきだという主張だと思いますので、そういう意味では、全く個別的ではなくて、何か一定の基準が必要になってくるというところが難しい問題だと思っております
 この20ミリシーベルト以下のどういう基準がいいのか。10ミリシーベルトなのか、あるいは5なのか、そういう問題については、これは残念ながら、おそらく、この審査会自身がその基準を決めるということは難しい。これは大塚委員が言われたとおりだと思います。
 ちょっと何か責任逃れするような言い方かもしれませんが、これはやはり政府が責任を持って考えるべき問題であって、審査委員会というのは、いろいろなそういう周辺の状況が、避難のための基準だとか、今のどのぐらいの汚染の場合に避難するということがおかしくない、合理的な行動だという判断をするための指針自体は、繰り返しになりますけれども、この審査会ではなかなかつくれなくて、その指針が、あるいはその基準がつくられれば、審査会としては、そういう程度の汚染のときに避難したり、あるいは、それ以外の損害が生じた場合に、それを賠償の対象にするということが言えるという構造になっているところに、この審査会の、残念ながら限界であると同時に、難しさがあるように思います。
 したがって、私としては、この問題については、どういう形で扱うかはちょっと別として、指針の中で、あるいは付記をすることも可能かもしれないし、あるいは、ここで議論することで、議事録に残すということでも構わないと思いますけれども、何らかの形で、この審査会としての意見、考え方は明確に示しておきたいと思います
。その中身自体、まだ、今いろいろなニュアンスのある、違う考え方があったと思いますけれども、今回、もうちょっと議論して、さらに次回、引き続き、議論することになると思いますけれども、今までの意見につけ加えて、あるいはさらにご意見があればお願いしたいと思います。どうぞ、草間委員。

【草間委員】  大変難しい問題ですけれども、一応、第一次指針から追補まで含めまして、できるだけ早く迅速に対応しましょうという基本的な考え方のもとで、今まで来たんだろうと思います。だから、そういう意味では、人に関係したところ、自主避難をどうするかという、今、会長が言われたように、20ミリがいいかどうかという議論というのは、ここではなかなかできない問題ですので、とりあえず、やっぱり迅速に損害に対してここで審査しましょうということになりますと、今、人に関する問題としては、とりあえず屋内待避とか、そういったものも含めて、避難等にかかわったものについて損害をということですので、具体的には、慰謝料を含めまして、避難にかかわる費用とか、そういったものに関しては、とりあえず、ここの中間指針の中では、20ミリという形で国、あるいは地方自治体等が指示を出したものについて補償しますということなんだろうと思うんです。
 先ほど水俣のお話がありましたけれども、その後、具体的な健康被害に対してどうするかという問題ですけれども、これは第9のところにもありますように、これから、仮に問題になる健康被害というのは、要するに晩発影響でして、がんが問題になってくるんだろうと思いますけれども、そのときはリスクという形で考えていかなきゃいけないので、このリスクに関しましては、直ちに、晩発影響に関しましては潜伏期間があって、ある期間、最低でも2年、あるいは10年の最小潜伏期を経ないと出てこないので、そういった健康被害等については、第9にあります「放射線被曝による損害について」という形で、晩発影響についてはどこまでそのリスクを補償するかというのは、次の問題として大きな課題で出てくるんだろうと思いますので、今回はとりあえず、最初のところは、国、あるいは地方自治体が20ミリシーベルトという形でやった、そこの人たちを対象にという形でやることが、やっぱり迅速にこの指針を出すということにつながるんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

【能見会長】  何人かの委員のご意見は、当面、少なくとも避難に関する費用、損害等については、国が20ミリシーベルト、これは避難準備区域とか、あるいは警戒区域というのは、ちょっと違った観点から円が描かれていると思いますけれども、計画的避難区域、あるいはホットスポットに関しては、20ミリシーベルトという考え方が明確に出ていて、それが避難のための基準、避難をすべきだ、あるいは推奨されるという基準であるというのが、おそらく今の、一応、政府がつくっている基準であると思います。そういう意味では、避難に関連する費用の賠償は、繰り返しになりますが、当面これを基準にしながら、この中間指針というのはつくるけれども、ただ、20ミリシーベルト以下であっても、それなりにいろいろな合理的な危険性があるので、その危険に対応するための措置というのが必要なんだという考え方が示されれば、これは、その危険に応じた損害というものの賠償というものは考えられる。
 ただ、これも繰り返しになりますけれども、現在の指針そのものでは、なかなか今、扱えない。けれども、今の基本的な考え方は、できれば指針のどこかに付記する形で、あるいはこれに接続する形で、別な意見の表明になるかもしれませんけれども、審査会としての考え方は示すということは、ぜひしたいと思います

 また、これは非常に大きな問題だと思いますので、次回も引き続き議論したいと思いますけれども、決して、こういう問題について、私としては審査会でネグレクトしていい問題であるというふうには思っておりません。何かつけ加えて、田中委員、どうぞ。

【田中委員】  会長の言うことで、私も同意なんですが、20ミリでいいということを、20ミリだから避難することが唯一の方法かというと、ICRPなんかが言っていることはそうではないんですね。だから、これはこの委員会のミッションではないと思いますけれども、そのことを踏まえて、やはり20ミリシーベルト以下でも不安に思っている方もいるし、事実、そういう具体的な例もいっぱい出ていますから、それについては、政府のほうで、そういうことを踏まえて何か対応策を考えていただくということで、私は会長の言うようなことでよろしいんじゃないかと思います。
 直ちにと言ったら言葉があれですけれども、すぐ20ミリシーベルトという積算線量になるという状況にはないわけですしね。今、政府の基準も、来年3月までを積算して、20ミリになるかもしれないというところで線を引いていますから、そういう意味では、まだ時間的にも、もう少し余裕がありますので、そういうことで、避難だけが唯一じゃないんだということを付記していただきたい

【能見会長】  今のご指摘とも関係しますけれども、避難以外の損害、先ほど、最初のきっかけになったのは検査のあれですけれども、場合によっては、こういうものは20ミリシーベルトに関係なく認めるという考え方もあり得るのかもしれませんね。
 ただ、指針の枠組みとして、そういうのを扱うときに、どこで扱うかという問題にまた戻ってまいりますけれども。どうぞ、中島委員。

【中島委員】  議事録に残していただくために、これは田中委員から教わったことなので確認したいんですけれども、今、田中委員がおっしゃったことをもう少し確認したいんですが。以前、教わったんですが、国際的な基準では、20ミリシーベルトから100ミリシーベルトの間で、社会的な環境などを考慮して、避難の基準を決めなさいとなっているところを、日本政府は一番安全な20ミリシーベルトをとったんだというふうに、たしか田中委員から教わったんですが、そういう理解でよろしいでしょうか

【田中委員】  私はそういうふうに理解しています。原子力防災基準では、50ミリのおそれがあるところ、これはさっき会長がおっしゃった20キロ圏ですね。だから、計画的避難区域と少し違うというのはそこですね。実際に計画的避難区域は、もう放射能があるので、来年までいると20ミリを超えるかもしれないということで避難になっていますので、そこは少し様子が違うと。そのとおりだと思います。

【能見会長】  よろしいですか。それでは、今日のご意見も踏まえて、取り扱いの仕方も含めてどうするかを、また次回、検討させていただければと思います。
 それ以外、第3のところについてはよろしいでしょうか。


----------------------------------



2011-08-05 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その1

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その1


〔自主避難問題〕
 避難等指定区域外に居住する人が,原発事故,放射能汚染を危惧して,そこから離れた場所に避難している場合,その人々の被った損害がとうなるのかという問題。
「損害」としては,区域内の避難者と同様に,精神的損害(恐怖,生活の不便等),財産的損害(生活費の増大,休職・失職による損害等)がある。
 これら損害の発生について,原発事故との事実的因果関係は,当然,肯定される。
 問題は,相当因果関係で,これをどのように認定していくのか。

 これは難しい問題で,判断としては,以下の立場があって,原子力損害賠償紛争審査会は,「原子力損害」の範囲の判定の指針(原賠法18条2項2号)を定めようとするものであるから,法律的判断として,どうなるのかということだろう。

-------------------
1 科学的知見(科学者)
2 政策的判断(立法、行政)
3 法律的判断(司法)

・科学的知見については、科学の問題なので、ある程度の予想・仮定はできるとしても、今のところ分からないという結論がありうる。政策的判断、法律的判断については、わからないので今は判断しないということはできない。

・科学的知見については、政策や法律は無関係。

・政策的判断、法律的判断については、基礎として、その時点で判明している確定的な科学的知見が置かれる。

・政策的判断は、立法権がある以上、既存の法律に拘束された判断でなくなてもよい。ただし、憲法には拘束される。また、行政は一定の裁量があるが、法律に拘束される。

・法律的判断は、当然、既存の法律に拘束される。ただし、規範的要素について、政策的判断をせまられることがある。その場合でも法の趣旨には拘束される。
-------------------


 紛争審査会の議論をみていると,この問題も結局,相当因果関係の枠組みで,しかも,風評被害でとったのと同様の理屈を用いて,判断するかのようである。
 つまり,その避難判断,回避行動が,一般通常人を基準に合理的と認められるか否かで決するということになる。

 この点,風評被害の場合と違うのは,判断者が,被害者自身ということである。農作物の風評被害については,その回避行動の判断は第三者である消費者がするものだから,その点は違っていて,風評被害で第三者の消費者の判断の合理性を問題とする場合よりも,法律論としては,素直ともいえる。
 問題は,この合理性をどのように判断するかということになるが,これには風評被害について述べたことと同じ問題がある。
 客観的に汚染が無いのに,疑心暗鬼になって汚染があると思いこんで,回避行動に出た場合なら,個人の主観的な思いこみであって,一般通常人を基準とした合理的判断ではないと言えるかもしれない。
 しかし,現実に放射性物質が飛散して,汚染がある場合で,しかも,その危険性の認識の程度や,それに対する対処方法や受忍限度について社会的コンセンサスが確立しているわけでもないとき,何が一般通常人にとって合理的といえるのかが判然としない。
 かといって,一応の法律的判断の担当者が,科学論争や政策的判断まで,全部引き受けなければならないということはないので,本来なら紛争審査会としては,科学的基準が確立するか,立法等による基準策定を待つということになろうが,それが無い場合で,急がないといけない場合は,仕方ないので,なんらかの基準で判断せざるを得ない。


〔手かがり〕
1 距離
 これから爆発が起きるとか,放射性物質が飛散するとか,あるいは事故後でも放射性物質の飛散の分布・線量が判明していないような場合は,汚染のあり方が分からないので,原発からの距離で,危険性は漸減すると考えてよいはずである。
2 汚染度
 これに対して,既に飛散してしまった放射性物質による被ばくの危険を問題とする場合は,距離ではなくて,現実の汚染度が問題となるはずである。
 汚染度については,
(1)ICRP基準(一般公衆)
  平常時 1mSv/年
  緊急時 20~100mSv/年
  放射線源の制御後 1~20mSv/年
(2)電離放射線障害防止規則(職業被ばく)
 (管理区域)
  1.3mSv/3月(規則3条1項)
 (放射線業務従事者の限度) 
  原則 50mSv/年 かつ 100mSv/5年(規則4条1項)
  妊娠可能性ある女性 5mSv/3月(規則4条2項)
  妊婦 妊娠診断から出産までの期間で1~2mSv(規則6条)
3 避難者の類型
  子供,妊婦,妊娠可能性ある女性,高齢者など,同じ汚染度でも,影響の度合いが違う場合は,その避難判断の合理性に差があってもおかしくない。上の電離則でも,妊婦等で区別されている。


〔判断のあり方〕
 上の,ICRPや電離規則での判断は,いうまでもなく,大規模な避難による社会的損失だとか,避難者となることによって生じる健康被害だとか,放射線業務の遂行上の支障だとか,便益も勘案した上での,政策的な基準である。
 しかし,自主避難者問題で検討すべきは,避難する個人の判断の合理性の問題である。政策的判断として,全体としては不合理でも,個人としては合理的行動というものはあり得る。コミュニティーの崩壊とか社会的損失を防ぐためなら,自分や自分の子が犠牲になる可能性を多少負っても,それでもよいというのは,危険についての個人の判断の合理性とは関係がない。社会的損失が大きいから,その判断が合理的ではないというのは,その政策的判断をした為政者からは言えるが,それによって危険の側に立たされる個人から見れば,合理的と言えない場合がある。もともと,危険かどうか判然としない場合は,それに近寄らないというのが,個人としては,当然の合理的判断であるとさえ言える。

 ものを考える際に,リスクと便益との比較衡量による判断というものがある。そのリスクも便益も同一の主体,構成員全員に平等に及ぶ場合は,問題が少なかろうが,リスクがある少数者に偏る場合は,その個人としては,そのような判断には全く納得がいかない,きわめて不合理な判断という他ない。
 ここを混同すると,「危険と社会的便益についての政策的判断=個人の危険性についての合理的判断」ということになり,たとえば単純にICRPに従い20mSv/年未満での,指定等区域外の者の避難行動は,主観的で不合理なものであって,賠償の対象とならないということになろう。

 また,政府による避難等の指定と,賠償範囲も,理屈の上では,無関係である。避難等の指定は,政府による住民らの安全と避難による損失を勘案した上での政策的判断であり,賠償範囲は,その避難が個人として合理的な判断といえるのかという問題だからである。したがって,一定範囲の自主避難者に賠償の余地を認めたからといって,その範囲が避難等指定区域と同様に扱いになるものではないし,当然に避難を強いられるというものでもない。


 結局,賠償範囲を画する法律的判断としては,個人の判断の合理性が問題とされるべきであって,一般通常人ならどの程度で危険を感じて,避難行動に出るのが無理もないといえるのかという点が問題となるはずである。
 
 そこで,もとの自然放射線とほとんど異ならない,あるいは,年1mSv/年未満である地域とそうでない地域と分ける。そして,放射能汚染の危険というものは,汚染の程度や,被ばくする主体の類型によって相違があるだろうから,年1mSv/年を超える地域については,一応相当因果関係を認めた上で,居住地域の汚染度と,主体の類型で分けて,その組み合わせで,危険性の大小を判断し,危険性が高い方が当然に避難判断の合理性が高いものと考えられるので,大から小へ,賠償額ないし賠償率を漸減させるというほかないのではないか。
 そもそも,避難区域等に指定されるか否かで,ほんの数十メートルの差で,その避難が合理的か否かが決まってくるというものではなかろう。危険の程度の増加度合いによって,危険性判断についての合理性の程度も増すというものだろう。
 ただし,因果関係は本来あるか無いかの判断だから,それだけで賠償額や賠償率の差を導くことはできないので,被害者側の素因等の場合と同様に,損害の公平な分担の見地から,汚染度,人の類型等での危険の程度によって,賠償額の漸増,漸減を導くという手があるかもしれない。あるいは精神的損害については,避難時点での汚染度や人の類型からその危険度が高い方が,避難に際して精神的苦痛も大きいと考え,それを賠償額の算定において,考慮するということになろうか。

 もっとも,このように判断・処理するには,各地域の汚染度についての調査が行われる必要がある上に,避難者の類型についての決定や,避難しなかった者との公平の問題など,いくつも問題があろうから,実際には,一定線量以下では,一律にその避難は不合理と判断されるかもしれない。ただ,避難した者と,避難しなかった者との公平については,そもそも避難した者は,避難による損害を被っている前提なので,賠償によってその損害の填補がなされたにすぎず,公平を失しているということはできないだろう。


テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-08-03 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop
ホーム

プロフィール

text2

Author:text2
原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

全記事のリスト表示

全ての記事を表示する

検索フォーム

カレンダー

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

QRコード

QR

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アクセスカウンター

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
636位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
284位
アクセスランキングを見る>>
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。