東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・自治体の損害 その3 税収減は損害か

・自治体の損害 その3 税収減は損害か


平成23年8月5日出された,原子力損害賠償紛争審査会の中間指針では,以下のとおり。

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http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-196.html
2 地方公共団体等の財産的損害等
(指針)
 地方公共団体又は国(以下「地方公共団体等」という。)が所有する財物及び地方公共団体等が民間事業者と同様の立場で行う事業に関する損害については、この中間指針で示された事業者等に関する基準に照らし、本件事故と相当因果関係が認められる限り、賠償の対象となるとともに、地方公共団体等が被害者支援等のために、加害者が負担すべき費用を代わって負担した場合も、賠償の対象となる。
(備考)
1)地方公共団体等が被った損害のうち、地方公共団体等が所有する財物の価値の喪失又は減少等に関する損害及び地方公共団体等が民間事業者と同様の立場で行う事業(水道事業、下水道事業、病院事業等の地方公共団体等の経営する企業及び収益事業等)に関する損害については、個人又は私企業が被った損害と別異に解する理由が認められないことから、この中間指針で示された事業者等に関する基準に照らして、賠償すべき損害の範囲が判断されることとなる。加えて、地方公共団体等が被害者支援等のために、加害者が負担すべき費用を代わって負担した場合も、前記第8の(備考)3)で述べたことと同様に、賠償の対象となる。なお、地方公共団体等が被ったそれ以外の損害についても、個別具体的な事情に応じて賠償すべき損害と認められることがあり得る。
2)他方、本件事故に起因する地方公共団体等の税収の減少については、法律・条例に基づいて権力的に賦課、徴収されるという公法的な特殊性がある上、いわば税収に関する期待権が損なわれたにとどまることから、地方公共団体等が所有する財物及び地方公共団体等が民間事業者と同様の立場で行う事業に関する損害等と同視することはできない。これに加え、地方公共団体等が現に有する租税債権は本件事故により直接消滅することはなく、租税債務者である住民や事業者等が本件事故による損害賠償金を受け取れば原則としてそこに担税力が発生すること等にもかんがみれば、特段の事情がある場合を除き、賠償すべき損害とは認められない
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 要するに,①税金は,商品・サービス・労働等の対価として支払われるものではなく,法により強制的に徴収されるものという特殊性があること,②被害者が損害賠償金を受け取れば,そこからの徴税の余地があることから,原子力損害とはしないということだろうか。


 これに対して,日本弁護士連合会の意見は,

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http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/110817.pdf

「東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」についての意見書

〈略〉

6 東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「本件事故」という。)に起因する固定資産税・住民税等の地方公共団体等の税収の減少についても損害賠償の対象とされるべきである。

〈略〉
5 本件事故に起因する固定資産税・住民税等の地方公共団体等の税収の減少についても損害賠償の対象とされるべきこと中間指針は,次のように述べて,税収の減少については,原則として賠償すべき損害には含まれないとしている。
「本件事故に起因する地方公共団体等の税収の減少については,法律・条例に基づいて権力的に賦課,徴収されるという公法的な特殊性がある上,いわば税収に関する期待権が損なわれたにとどまることから,地方公共団体等が所有する財物及び地方公共団体等が民間事業者と同様の立場で行う事業に関する損害等と同視することはできない。これに加え,地方公共団体等が現に有する租税債権は本件事故により直接消滅することはなく,租税債務者である住民や事業者等が本件事故による損害賠償金を受け取れば原則としてそこに担税力が発生すること等にもかんがみれば,特段の事情がある場合を除き,賠償すべき損害とは認められない。」
 しかし,この見解には直ちに賛同できない。
 まず,税金には「法律・条例に基づいて権力的に賦課,徴収されるという公法的な特殊性がある」ことはそのとおりであるとしても,この減収を東京電力株式会社に請求できないという積極的な理由はない。また,一般的にみても逸失利益は期待権侵害という側面を持っているのであって,これも理由にはならない。
 さらに,既発生の租税債権については,市町村の税収の中心をなす固定資産税は,本件事故によってその価値を喪失しているものが多く,明らかに徴収すべきでない状況になっており(現在,固定資産税は徴収延期となっているようである。),それは,東京電力株式会社からの損害賠償があれば直ちに課税して徴収するということも適切とは思われない。さらに,住民税についても,頭割り部分は,本来確実な徴収ができるはずであるのに,今回の事態で徴収すること自体が適切かどうかという問題があり,所得比例部分についても,損害賠償がされれば直ちに課税して徴収することが適切かどうか疑問がある。
 以上を考えると,本件事故に起因する固定資産税・住民税等の地方公共団体等の税収の減少についても損害賠償の対象とされるべきである。
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※警戒区域の固定資産税,都市計画税の減免については,改正地方税法51条以下
http://shop.gyosei.jp/contents/sinsai/honbun/12008000_2.pdf

※改正法の概要
http://www.soumu.go.jp/main_content/000122790.pdf
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 東日本大震災における原子力発電所の事故による災害に対処するための地方税法及び東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の一部を改正する法律案の概要

 東日本大震災における原子力発電所の事故による災害に対処するため、固定資産税及び都市計画税の課税免除等の措置並びに不動産取得税、自動車取得税、自動車税等に係る特例措置を講ずることとし、あわせて、これらの措置による減収額を埋めるための地方債の特例措置等を講じる。

◎ 地方税法の一部改正
Ⅰ 避難区域内等の資産について特例を講ずるもの
【固定資産税・都市計画税】
1.警戒区域・計画的避難区域・緊急時避難準備区域等のうち市町村長が指定する区域における土地及び家屋に係る平成23年度分の課税免除
 警戒区域・計画的避難区域・緊急時避難準備区域等のうち、避難等の実施状況等を総合的に勘案して市町村長が指定する区域内に所在する土地及び家屋について、平成23年度分の課税を免除する。

【自動車税・軽自動車税】
1.警戒区域内自動車に係る自動車税・軽自動車税の特例
 警戒区域内にある自動車で、用途の廃止を事由とした永久抹消登録等がなされたものに対しては、平成23年3月11日にさかのぼって自動車税・軽自動車税が課されないようにする特例を講じる。


Ⅱ 警戒区域内の資産の代替資産について特例を講ずるもの
【固定資産税・都市計画税】
1.警戒区域内住宅用地に係る代替住宅用地の特例
 警戒区域内住宅用地の所有者等が当該住宅用地に代わる土地(代替土地)を警戒区域が解除されるまでの間に取得した場合等において、当該代替土地のうち警戒区域内住宅用地の面積相当分について、取得後3年度分、当該土地を住宅用地とみなす(※)。
※ 住宅用地とみなされた場合には、固定資産税・都市計画税が軽減される。
2.警戒区域内家屋に係る代替家屋の特例
 警戒区域内家屋の所有者等が当該家屋に代わる家屋(代替家屋)を警戒区域が解除されるまでの間に取得した場合等において、当該代替家屋に係る税額のうち当該警戒区域内家屋の床面積相当分について、4年度分2分の1、その後の2年度分3分の1を減額する。
3.警戒区域内償却資産に係る代替償却資産の特例
 警戒区域内償却資産の所有者等が当該償却資産に代わる償却資産を警戒区域が解除されるまでの間に、被災地域において取得した場合等においては、課税標準を4年度分2分の1とする。

【不動産取得税】
1.警戒区域内家屋に係る代替家屋の取得に係る特例
 警戒区域内家屋の所有者等が当該家屋に代わる家屋(代替家屋)を警戒区域が解除されるまでの間に取得した場合等において、当該家屋の床面積相当分には不動産取得税が課されないようにする特例を講じる。
2.警戒区域内家屋に係る代替家屋の敷地の用に供する土地の取得に係る特例代替家屋の敷地の用に供する土地で、警戒区域内家屋の敷地の用に供されていた土地(従前の土地)に代わるものを警戒区域が解除されるまでの間に取得した場合等において、従前の土地の面積相当分には不動産取得税が課されないようにする特例を講じる。

【自動車取得税】
1.警戒区域内自動車の代替自動車の取得の非課税警戒区域内にある自動車で、用途の廃止を事由とした永久抹消登録等がなされたものに代わる自動車(代替自動車)を平成26年3月31日までの間に取得した場合には、自動車取得税を非課税とする。

【自動車税・軽自動車税】
1.警戒区域内自動車の代替自動車に係る自動車税・軽自動車税の非課税警戒区域内にある自動車で、用途の廃止を事由とした永久抹消登録等がなされたものに代わる自動車(代替自動車)に係る平成23年度から平成25年度までの各年度分の自動車税・軽自動車税を非課税とする。


◎ 東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の一部改正
【地方債の特例等】
 上記の地方税法の一部改正による地方税等の平成23年度の減収額を埋めるための地方債の特例及び基準財政収入額の算定方法の特例を講じる。


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・まず,上のような法律によって,地方税が減免されたような場合は,国側が自ら徴税権を放棄したようなものなので,それを「原子力損害」とみることは困難かもしれない。
・「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」による援助・助成による回復分との関係も問題となる。
・逸失利益とみるには,対価性が必要なようにも思えるがその点はどうか。
・事故の有無にかかわらず,将来の不確実性があった点をどうするか。逸失利益一般の問題。税収に関しては,将来の不確実性の要素がかなり大きい。
・たとえばA市在住で高収入を得ているXをYが殺害した場合。A市は,翌年度以降,Xからの市民税が得られなくなる。A市が,その減った市民税分を,Yに対して損害賠償請求できるのか。これを認めると,国税についても,国の損害を同様に考えることになるだろうから,およそ人の収入を減少させたり,ゼロにさせたりする類の不法行為一般について,国や自治体からの賠償請求が問題となりかねない。何か特別な理屈がないと無理っぽい?


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2011-08-29 : ・地方自治体の損害 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・自治体の損害 その2 生活保護費の増大

・自治体の損害 その2 生活保護費の増大

 原発事故前からの受給者の分は別として,原発事故による汚染等で農地や漁場の利用ができなくなるなどして,住民の生活が成り立たなくなり,また高齢等で再就職もままならず,生活保護受給者が増加してしまった場合。〔現在の負担割合,自治体四分の一,国庫四分の三,生活保護法75条〕
 国や自治体は,その増加部分をなんらかの根拠で回収できないか。

 原賠法に基づく損害賠償請求権と,各種社会保障制度との関係の,おおまかな考え方については,こちらで述べた。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-150.html

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●生活保護法
(この法律の目的)
第一条  この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

(無差別平等)
第二条  すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。

(最低生活)
第三条  この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

(保護の補足性)
第四条  保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2  民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3  前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

(この法律の解釈及び運用)
第五条  前四条に規定するところは、この法律の基本原理であつて、この法律の解釈及び運用は、すべてこの原理に基いてされなければならない。

(費用返還義務)
第六十三条  被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
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〔前提〕
・憲法25条,生活保護法2条から,受給要件を充たす限り,生活保護の受給は,国民の権利であり,その支給は国の義務ということになる。

・生活保護法に基づく給付金については,交通事故の場合,加害者への賠償請求権との関係で,損益相殺はされないとされている。つまり賠償額からは差し引かれない。この根拠としてあげられている最高裁判例は以下のとおりである。

最高裁昭和46年6月29日判決,判時636号28頁
(生活保護法について)「同法六三条は、同法四条一項にいう要保護者に利用しうる資産等の資力があるにかかわらず、保護の必要が急迫しているため、その資力を現実に活用することができない等の理由で同条三項により保護を受けた保護受給者がその資力を現実に活用することができる状態になつた場合の費用返還義務を定めたものであるから、交通事故による被害者は、加害者に対して損害賠償請求権を有するとしても、加害者との間において損害賠償の責任や範囲等について争いがあり、賠償を直ちに受けることができない場合には、他に現実に利用しうる資力かないかぎり、傷病の治療等の保護の必要があるときは、同法四条三項により、利用し得る資産はあるが急迫した事由がある場合に該当するとして、例外的に保護を受けることができるのであり、必ずしも本来的な保護受給資格を有するものではない。それゆえ、このような保護受給者は、のちに損害賠償の責任範囲等について争いがやみ賠償を受けることができるに至つたときは、その資力を現実に活用することができる状態になつたのであるから、同法六三条により費用返還義務が課せられるべきものと解するを相当とする。」

 要するに交通事故の被害者が,生活保護法4条3項による支給を受けても,将来的に賠償を受けた後には,同法63条で,自治体への返還義務があるのだから,加害者への賠償請求権との関係では損益相殺されることはないというものだろう。

 したがって,自治体が生活保護法4条3項での保護費の支給をしているよう場合には,本来的には,自治体は,将来,原発事故被害者に賠償金が入った段階で,同法63条で返還を受けることによって,損失を回復できるというものであろう。

 しかし,実際は,生活保護法63条の「資力があるにもかかわらず」をどの時点で捉えるかという問題があり,また,そもそも生活保護は,被害者の被った損失の填補というよりも,社会福祉目的からの支給であるという差もあって,自治体は住民から,当然に全額を返還を期待できるというものではない。

 この点について,昭和47年12月5日付,社保196号厚生労働省通知「第三者加害行為による補償金、保険金等を受領した場合における生活保護法第63条の適用について」という通達がある。

------------------------------- 
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/
○第三者加害行為による補償金、保険金等を受領した場合における生活保護法第六十三条の適用について
(昭和四七年一二月五日)
(社保第一九六号)
(各都道府県・各指定都市民生主管部(局)長あて厚生省社会局保護課長通知)

 標記について、今回左記のとおり取扱い方針を定めたので、了知のうえ、管下実施機関を指導されたい。


1 生活保護法第六十三条にいう資力の発生時点としては、加害行為発生時点から被害者に損害賠償請求権が存するので、加害行為発生時点たること。したがつて、その時点以後支弁された保護費については法第六十三条の返還対象となること

2 実施機関は、1による返還額の決定にあたつては、損害賠償請求権が客観的に確実性を有するに至つたと判断される時点以後について支弁された保護費を標準として世帯の現在の生活状況および将来の自立助長を考慮して定められたいこと。
 この場合、損害賠償請求権が客観的に確実性を有するに至つたと判断される時点とは、公害、自動車事故については次の時点であること。
(1) 公害の場合
ア 第一次的に訴訟等を行なつた者については、最終判決または和解の時点
イ 第一次訴訟等の参加者以外の者であつて、客観的に第一次訴訟等の参加者と同様の公害による被害を受けた者と認められる者についても、アと同一の時点
ウ ア、イに該当しない者については、その訴訟等に関する最終判決または和解の時点
(2) 自動車事故の場合
 自動車損害賠償保障法により保険金が支払われることは確実なため、事故発生時点
-------------------------------


 今回の原発事故では,少なくとも避難等の指定地域は,賠償金の支払いはおそらく確実で,その項目や額がいくらになるかについて問題があるような場合だから,上の通知でいうと「自動車事故の場合」と同様の扱いになるかもしれない。
 他の地域で曖昧なもの,原子力損害賠償紛争審査会の最終指針からもれたものなどは,上の「公害の場合」と同様に扱われるかもしれない。

 ただし,この通知では,2で,「返還額の決定にあたつては、損害賠償請求権が客観的に確実性を有するに至つたと判断される時点以後について支弁された保護費を標準として世帯の現在の生活状況および将来の自立助長を考慮」すべきとしているので,「自動車事故の場合」と同様に考えて,事故発生時点から「資力がある」とされても,具体的な返還額は,①損害賠償請求権が客観的に確実性を有するに至つたと判断される時点以後について支弁された保護費を標準として,②世帯の現在の生活状況および将来の自立助長を考慮して決定されるので,自治体としては,当然に事故発生後の支給額全額の返還を受けるわけではない。

 とするとやはり,一部は自治体〔および国〕が,負担をかぶることになって,自治体は,その分を東電に対して請求できないかという問題になってくる。

 これは,こちらで述べたのと同様に考えることになろう。

 
 生活保護のような公的扶助制度は,その原因如何にかかわらず,国民の最低限度の生活を保障するものであり,社会福祉目的の給付で,結果的に被害者が二重に受給できることになっても仕方がないという場合には,支給者である自治体や国が,その支出による損害を,自己の固有の損害として,加害者に対して,損害賠償請求できるのかという問題となり〔加害者がその分の賠償を免れないという点で加害者への求償の問題とはならない。〕,生活保護法の制度趣旨等からそもそも自治体固有の損害の有無が問題となったり,原発事故と相当因果関係のある損害といえるのかや,予見可能性等が問題となるのかもしれない。


 なお,被害者として,生活保護を受けて生活し,後に失職休職期間中の収入相当額の賠償金(逸失利益)を得た場合に,その一部だけ返還すれば良いとなれば,前記の通知にある「損害賠償請求権が客観的に確実性を有するに至つたと判断される時点」が遅れれば遅れるほど得するという妙なことになるかもしれない。逆に言うと東電としては,結果的に被害者への賠償と,自治体への賠償の二重払いのリスクがあることになるから,休業や失職による逸失利益のうち生活に要する費用程度は,さっさと払っておいた方がよいということになろう。

 そもそも,原子力損害賠償紛争審査会の指針が出るまで,東電の支払いが法律上猶予されるわけではなく,また,東電が,指針に従わなければならないという法的義務もないので,損害発生時(最判昭37.9.4民集16-9-1834)から賠償金に対する年5%の遅延損害金が発生し続けているし,支払いを渋ると損害の拡大,又は,その危険を自ら拡大させることになろう。



こちらで述べた宿泊代等は,加害者がその分の被害者への賠償義務を免れうるものであって,自治体から東電への求償の問題となり,その法律構成の問題があるだけである。

※第三者加害の場合,求償や代位に関する規定の存在しない雇用保険法に基づく失業給付等についても、同種の問題があろう。別項で考えたい。



2011-07-01 : ・地方自治体の損害 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・自治体の損害 その1 避難者の宿泊費等の負担

・自治体の損害 その1 避難者の宿泊費等の負担

http://www.kyodonews.jp/feature/news05/2011/04/post-444.html
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原発事故の避難者が旅館へ 福島県が宿泊費を負担

 東京電力福島第1原発事故で、避難指示や屋内退避の指示を受け体育館などの避難所で暮らす30キロ圏内の住民らの生活環境を改善しようと、福島県は1日、新たな移転先として県内の旅館など複数の宿泊施設を用意し、宿泊費を県が負担する初の取り組みを始めた。
 移転したのは避難指示が出ている同県富岡町の町民ら約500人。このうち磐梯熱海温泉の旅館「ホテル華の湯」(郡山市)に着いた渡部国綱さん(66)一家は「畳に寝られる」「風呂に入れる」と喜ぶ一方で「事故が収まらないと先は見えない」と漏らした。
 県によると、宿泊費の負担が受けられるのは30キロ圏内の住民や、震災で自宅が全半壊した住民。宿泊期間は仮設住宅などが整うまでで、家族ごとに部屋に分かれて生活してもらう。
 県が宿泊施設に協力を呼び掛け、1泊3食付きで5千円以下に設定。3万人分の受け入れ先を用意し、今後各自治体が希望する住民の声をまとめ移ってもらう。
 ホテル華の湯の安藤弘道支配人(53)は「事故の風評被害で観光業も大変な中での協力だが、復興に向け足並みをそろえなければ」と話した。
(2011年4月 1日)
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 自治体が,原発事故からの避難者の宿泊代を負担している場合には,自治体はその分の損失を被ったことになる。この支払いが単なる立替払いの場合は,自治体は,後から,避難者から回収することになろうが,そうでない場合は,自治体は,東電に対して,その出費分を請求することになる。その法律構成はどうなるのか。

1 直接の被害者として
 法律上の義務として,自治体が,当然に,住民のために宿泊施設等を提供しなければならない場合は,原発事故との相当因果関係が肯定されることが多いだろうから,そのまま,自治体自身が,原発事故により損害を被ったとして,直接の被害者として,原賠法3条1項に基づく損害賠償を東電に対して請求できると構成する余地があろう。

2 損害賠償による代位の類推
 民法422条では,「債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。」とあり,この規定の類推適用によって,自治体の代位請求を認める余地もあるかもしれない。

 ※最高裁昭和36年1月24日判決(判タ115号67頁)「労働基準法は、同法七九条に基き、使用者が遺族補償を行つた場合において、補償の原因となつた事故が第三者の不法行為によつて発生したものであるとき、使用者はその第三者に対し、補償を受けたものが、第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得するか否かについて何ら規定してはいないが、右のような場合においては、民法四二二条を類推して使用者に第三者に対する求償を認めるべきであると解するのが相当である」

3 被害者の有する権利の代位行使として
 避難者は,宿泊料等の避難費用を,原子力損害として,〔相当な範囲で〕東電に対して請求しうる立場にある。ただ,紛争審査会の指針にもあるように,実際に,避難者が,請求できるのは原則として現実に支払った実費負担部分だけなので,実際に払っていない部分については,避難者が請求してもその部分は支払いを受けられない。
 もっとも,本来,避難者は宿に対して,宿泊料の支払義務を負う。そして,避難者はその代金支払分を,原子力損害として東電に請求できる状態にあるのが原則である。その場合に,自治体が,避難者に代わって,第三者として宿への宿泊代金の支払いを行ったもとのみて(第三者弁済,民法474条),避難者は宿泊料の支払いの債務を免れたことにより,自治体が東電に代わって避難者に賠償金を支払ったものとみて,代位(弁済による代位,民法499条,500条類推)することにより,宿代分の損害を,直接東電に請求するという構成が考えられる。

4 避難者から賠償請求権の一部譲渡を受けたと構成?

5 事務管理の費用償還請求権(民法702条類推?)

6 不当利得返還請求権(民法703条)
 自治体が、第三者として支払ったことで、東電がその部分の避難者への賠償義務を免れ、法律上の原因なくして利益を得たとして、不当利得返還請求をする。

7 法律上の義務の場合に,東電の賠償請求権と,原発事故の結果自治体が負った義務との関係を不真性連帯債務として,とらえて自治体から東電への全額の求償請求を認める。


2011-06-03 : ・地方自治体の損害 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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